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リオ・オリンピックのCMは、エモーショナルVSオリンピアン

楓セビル



01 ジレットのオリンピックCM「完璧は美しいものだとは限らない」は、選手のこれまでに見せていない側面を鋭く描いている。

多すぎたオリンピックCM?

さまざまな問題を抱えたリオのオリンピックが、8月5日に開会し、8月21日に無事に閉会した。今年のオリンピックの開催日は、なんとなく来て、なんとなく過ぎたような感覚があった。おそらくそれは、アメリカではすでに数カ月前からオリンピックをテーマにした各社の広告がYouTubeやインターネット、テレビなどで盛んに流れていたからだ。例えば2012年のロンドンオリンピックの時のような事前の興奮がなかったのは、そのためなのだろう。事実、「これまでのオリンピック以上の興奮と視聴率を取る」と約束していたNBCのオリンピック・オープニング・セレモニーの視聴率は、ロンドンオリンピックのそれに比べて28%も下降。それだけでなく、ソーシャル・メディアには二つの理由で、視聴者からの苦情が殺到した。1つは、NBCがストリーミングの時間をリアルタイムで放送せずに1時間遅らせたこと。本命であるテレビでの視聴率を上げるための工夫だったのだろう。何でもタブロイドやスマホで視聴するミレニアルには、それがフラストレーションになったようだ。

もう1つは、オープニングの最初にオンエアしたCMの多さだ。その中には既に数カ月前から放映されており、見飽きるほど見ているCMも多くあった。IOC(国際オリンピック委員会)の“ルール40”と呼ばれる、オリンピアン(オリンピック選手)が登場するCMに課せられる制約の緩和が、オリンピック開催前にオリンピックCMの数を増やす結果になったようだ。従来はオフィシャル・スポンサーでない限り、オリンピック開催中に選手が登場する広告トを出してはならないという規則だった。今回より、選手と長い間契約のある広告主はノン・スポンサー企業でも、IOCの許可を取れば、オリンピック開始の4カ月前から選手が登場するCMを流してもよいという規則に変更となった。その結果、ゼネラル・ミルズ、ゲータレード、アディダス、レッドブル、アシックス、スピード、ジョンソン&ジョンソンなどが、その新しい規則を利用して、数カ月前からオリンピックに関連するCMを流したのだ。

リオ・オリンピックCMのトレンド

こうして、オフィシャル(コカ・コーラ、GE、パナソニック、オメガ、サムスン、VISA、マクドナルド、ブリヂストン、ダウ、P&G、アトスなど)、ノン・オフィシャル(アディダス、ペプシ、バドワイザーなど)が入り乱れての広告合戦が展開され、口の悪い批評家から“CMオリンピック”などというニックネームをつけられるほど多数の広告がスクリーンに登場する結果となった。しかし、手に汗を握るゲームをCMに中断されていらいらしている視聴者の関心を惹くには、これまでにない新しいマーケティング戦略が必要であることに気づいた広告主も多かったようだ。

過去数回のオリンピックの広告を対象に行われたフォーブス誌のリサーチによると、オリンピック広告が効果を上げるには、(1)視聴者の心に深いエモーショナルなインパクトを与える、(2)リアルタイムでよい成績を上げているオリンピック選手が登場する、の2つだと報告している。それにもかかわらず、リオ・オリンピックでは、こうしたアプローチを避ける広告主が多く出現。特に高額のフィーを払ってグローバル・パートナーになっている企業にその傾向は見られた。例えば、コカ・コーラのCMは、有名なオリンピック選手を起用する代わりに、コーラという商品そのものをフィーチャーし、あまり知られていない数人の選手だけを登場させている。主役はあくまでもコーラ、特にそのバブル(泡)に着目。「オリンピック選手の広告が氾濫する中で、それがいかにも新鮮に映った」と、あるツィッターではつぶやかれていた。また、VISAカードも、数人のオリンピック選手が同じ車でリオに向かう行程を描いたCMを制作しているが、選手陣のスターパワーを利用するかわりに、主役はあくまでも車が立ち寄るファーストフード店で使われるVISAカード。サムスンもスター選手でなく、アフリカの小国スーダンの、金メダルとはほど遠い、若い、無名の女性陸上選手を登場させている(02)。国をあげて彼女を祝うスーダンの人々。女性選手はその歓声を ...

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