最近、『センテナリアン』という言葉を耳にする。「センテナリアン?」と首を傾げる人はまだ多いだろう。だが、今年のカンヌライオンズに出席し、偶然にも製薬会社メルク社のCMOアティラ・カンスン氏(02)の講演を聞いた人は、話の中に頻繁に登場した『センテナリアン』という言葉を耳にしたはずである。『センテナリアン』とは一世紀を生きた人、つまり100歳を越した人を指している。カンスン氏のスピーチの内容は、科学、医学の進展で、人間の寿命が長くなり、100歳を越して生きる人が世界的に増えている。そういった長寿を楽しむ人が増えるようにと、メルクは「We100」なるブランドを開発。センテナリアンになるための健康管理の一助にしてほしいというものであった。
注目される『スーパー・シニア』マーケット
2010年に発表された米国国勢調査によると、2007~2010年の間に米国におけるセンテナリアンの数は65.8%上昇し、5万3364人になるという。「これからの10年、この数は上昇を続けるはずである」とレポートは予測している。
センテナリアンが珍しくなくなっているとはいえ、米国総人口の中でのセンテナリアンが占める率は、いまだ0.02%に過ぎない。だから、カンヌや人口統計家の間でそれがどんなに話題になっていようと、たった5万人足らずのセンテナリアンを対象にマーケティングを展開するブランドも企業もないだろう。メルク社の「We100」(01)にしても、センテナリアンが対象のプロモーションではなく、その下の『スーパー・シニア』と呼ばれる65歳以上のグループが対象なのである。スーパー・シニアは経済的な面からも、イメージや精神的な面からも、またライフスタイルの面からも、センテナリアンになることを夢見る。事実、米国のスーパー・シニアの中には、『老年はこう過ごしたい』と思わせる『スーパー』スーパー・シニアがたくさんいる。例えば、この1月に出版され、『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーリストに載った『Alive、Alive、Oh!:And Other Things that Matter』の著者ダイアナ・アットヒルは今年99歳。いまだにカーネギーホールを満員にするジャズ・シンガー、トニー・ベネットは90歳。そういえば、大統領選挙戦でしのぎをけずるトランプ(70歳)もクリントン(69歳)も、共にスーパー・シニアである。
広告に登場するスーパー・シニア
ミレニアル世代一辺倒だったブランドも、最近になってスーパー・シニアの隠れたパワーに気づき始めた。特に高級品、金融サービス、製薬会社、旅行、引退者用ホームなどの業界は、いまだにいろいろな分野で活躍している魅力的なスーパー・シニアを広告に起用し始めている ...