2016年 カンヌ 日本の受賞は全部で49作品
パナソニック「Life is electric」をはじめ、デザイン部門は相変わらず強い日本。しかし、他の部門が厳しい結果となった。カモ井加工紙「MT」と資生堂「HIGH SCHOOL GIRL?メーク女子高生のヒミツ」はこれまでに数多く国際広告賞を数多く受賞しているが、今回も2部門以上で受賞。オーストラリア政府観光局「GIGA selfie」も3部門での受賞となった。
カンヌライオンズに見る世界の広告2016
エンターテインメントとミュージックの2部門で構成された今年新設のライオンズエンターテインメント。エンターテインメント部門では、ニューヨークタイムズの「THE DISPLACED」、エンターテインメントフォーミュージック部門ではBEYONCEのミュージックビデオ「FORMATION」とドイツのスーパーマーケットチェーン「EDEKA」の「HOME FOR CHRISTMAS」がグランプリを獲得するという結果であった。
しかし、全体の印象は、新設部門であるからか?広告業界とは関係ない?と思われたからか、授賞式・セミナーの参加者も他と比べて少なく(特に日本人は)、正直、盛り上がりに欠けているように思えた。しかし、メディア・コンテンツの視点で広告コミュニケーションを考える私からすると、受賞作からよりも、世界一流のメディア&エンターテインメント関係者による必見必聴のセミナーにこそ、これからの広告ビジネスに役立つエッセンスがいくつも隠れていたと感じた。
本祭カンヌライオンズでのWill Smith、David Copperfield、Iggy Pop、Usher、Shane Smith(VICE)をはじめ、エンターテインメントでのWWE、Hulu、Spotify、Sony Music、Vivendi などのセミナー&トークセッションで出てきた数々のキーワードを結びつけることから、ある種の法則が見えたので、ここで紹介していきたい。
ブランデッドエンターテインメント、ブランデッドコンテンツと同じ概念ではあるが、総じて言えるのは、エンターテインメントには、人を魅了し、心とつながるチカラがあるからこそ、広告自体がよりエンターテインメントになっていかねばならない。
今さら?と思う程、ストーリーという言葉をよく耳にしたが、この意味を再確認した。ブランドとオーディエンスとタレントをつなぐ真ん中には、ストーリーが必要で、どれだけプラットフォームが変わろうとも、よいストーリーは永遠に続くという考えに立脚したストーリー構築がとても重要。
VICE、Beats by Dr Dre、Red Bull というストリートに根づいたブランドの成功の共通項が「カルチャー」。オーディエンスを、年齢・性別などカテゴリーで区切るのではなく、同じ思想・嗜好性をもった人で括る=カルチャーオリエンテッドなターゲティングが今後のマーケティングの基本。
ブランドが伝えたいことを、そのオーディエンスの興味のあることに翻訳して伝えていくという意味合いの「NARRATIVE」という言葉が、今年のカンヌの重要キーワードの1つと言っても過言ではない。
これは個人的に一番刺さったWWEスーパースターJohn Cenaが何度も言っていた言葉。Will Smithも同じ視点の話をしていたが、オーディエンスの生の声に耳を傾け、向き合い、徹底的に知り尽くすという努力を怠ってはいけない。
1つ1つは聞いたことがある思想だが、5つが重なり、広告ストーリーになることで、人を動かすチカラになる。そのことを今一度感じたライオンズエンターテインメントであった。