2016年 カンヌ 日本の受賞は全部で49作品
パナソニック「Life is electric」をはじめ、デザイン部門は相変わらず強い日本。しかし、他の部門が厳しい結果となった。カモ井加工紙「MT」と資生堂「HIGH SCHOOL GIRL?メーク女子高生のヒミツ」はこれまでに数多く国際広告賞を数多く受賞しているが、今回も2部門以上で受賞。オーストラリア政府観光局「GIGA selfie」も3部門での受賞となった。
カンヌライオンズに見る世界の広告2016
全世界から集まるクリエイティブ。各部門の審査員たちは、それぞれ審査基準を設け、細かく審査を行う。2016年、その頂点に立ったのは、どんな作品なのか。グランプリ作品を中心に審査員の講評とあわせて見ていこう。
PR部門 グランプリ
COOP「The Organic Effect」Forsman&Bodenfors Gothenburg(スウェーデン)
スウェーデンでオーガニック食品の販売を行うスーパーチェーンのCOOPでは、スウェーデン環境研究所と共同である実証実験を行った。これまでオーガニックではない食品を食べてきた5人家族に、2週間にわたりオーガニック食品だけの食生活を送ってもらい、尿サンプルから検出される農薬の量を検査したのだ。その結果、2週間で検出される農薬はほぼゼロに。「もう元の食生活に戻したくない」と話す母親。その驚きの結果を収めた動画は数千万回再生され、COOPの売上も過去20年で最高を記録した。
PR部門 ゴールド
Nas Grunt「Bees Can Find Sugar Where You Least Suspect It」McCANN Erickson Prague(チェコ協和国)
チェコではWHO基準の3倍の糖分が摂取され、糖尿病患者が急増している。あまり知られていないが、チェコの人々がよく口にする加工食品(ハンバーガー、ケチャップ、ドレッシングetc.)にも糖分は多く含まれており、この“隠れた糖分”が糖尿病の進行の一因になっている。チェコのヘルスフードチェーンのNas Gruntでは、この糖分を蜂を利用して視覚化。加工食品から蜂が“採取”したハチミツを製造して人々に見せることで、強烈な気づきを与えるキャンペーンを実施した。
PR部門 ブロンズ
Ministry of National Education Colombia「The Bulletpen」McCANN Colombia Bogota(コロンビア)
「我々は弾丸をペンに変えたい」――内戦が続くコロンビアで、政府はここ2年連続で軍事費よりも教育費に予算を振り分ける方針を取っている。コロンビア教育省では、このことを広く知らせていくため、使用済みの弾丸の薬莢をリサイクルしたボールペンを制作。ジャーナリストや作家らオピニオンリーダーにこのペンを配り、使ってもらうことで「ペンは剣よりも強し」のメッセージを力強く発信した。
橋田和明(博報堂ケトル)
審査はアドとPRの違いにフォーカスして行いました。アドはフィクション、PRはファクトであるという考え方が大きなポイントでした。その上で重視したのは、シンプルに、アイデアに驚きがあるか。そのアイデアが最後の結果を導いたのか、ということでした。
まず日本の作品が海外の審査員に言われたのは、「そもそもこれの課題は何?」でした。他の国の作品は課題がシンプル。例えば貧しい、身体が不自由など、説明しなくても誰もがわかる課題。逆に日本の応募は問題じゃないことを …