2015年7月、東京・千代田区に新設された三井住友銀行のビルの中に、新たな企業ミュージアムが誕生した。「金融」という形のないものを展示し、情報を発信するミュージアムは、どう設計されたのか。
子どもがお金のことを知る場がもっとあっていい
空間の中に立つ8本の柱。その柱の表面に、さまざまなお金に関するアフォリズム(格言)や歴史上の出来事がゆらぎながら流れてくる。人間が「お金」を発明し、「金融」というシステムで「経済」を動かすようになった歴史――ここに流れてくるのは、その歴史を構成する小さな断片の数々だ。人の顔写真をタッチすると、質問が現れた。「お金とは何でしょうか?」。この質問、自分なら何と答えるだろうか?
この空間の名前は「金融/知のランドスケープ」。三井住友銀行が、東京・千代田区に新設したビルの中に設けた「金融」をテーマにした体験型ミュージアムだ。同社を訪れたビジネスパーソンはもちろん、広く子どもたちも対象に、「金融」という目に見えないものへの理解を深めてもらうために開設されたものだ。
企画の相談を受けたのは、ライトパブリシティのエグゼクティブクリエイティブディレクター 杉山恒太郎さんだった。新設するビルに地域の子どもたちも訪れられるミュージアムを作りたい、と聞いてまず思い当たったのは、「イギリスではお金について小学校で教えているのに、日本には“お金は子どもが触れてはいけないもの”というような偏見がある。もっと子どもがお金や金融のことを学ぶ場があったらいいのに」という日頃から抱いていた問題意識だったという。また、以前ワシントンでニュースの歴史を展示したミュージアム「NEWSEUM」を訪れたことがあり、形のない情報を、ミュージアムというくくりで紹介する面白さも体験したことがあった。「金融とミュージアム。一見すると相容れないものだけど、組み合わせてみれば面白いものになるのでは?」。その考えをもとに、コンテンツ編集チームを組織し …