座る際に骨盤をサポートする「バックジョイ」は、姿勢を良くし、ひいてはさまざまな身体の問題解消や、仕事の効率アップをもたらす。持ち運びやすさと豊富なカラーバリエーションによる親しみやすさが、サポート器具でありながらも多くの人の積極的な使用をうながしている。
使いやすさと親しみやすさを実現
従来の腰をサポートする器具は、椅子に備えつけて使用するものが一般的で、色も地味なものが多かった。そのため多くの人が使用するにはハードルがあったが、そのハードルを下げ、サポート器具をより身近なものにしたのが「バックジョイ」だ。
お尻に密着する面が独特のカーブを描いており、座ると腿の重みで製品の前部が押さえられ、てこの原理によって製品後部が持ち上がり、骨盤が支えられる。それによって座っている状態でも背骨が理想的なS字曲線を描き、腰への負担が軽減されるというのがバックジョイの仕組みだ。
特徴は、それだけの効果が、椅子に座る際にお尻の下に敷くだけで得られるという容易さにある。その手軽さから家やオフィスでの使用はもちろん、車や飛行機など移動中の座席でも使用でき、中にはプロ野球選手がベンチで使用している例もある。また豊富なカラーバリエーションを取り揃えていることで、サポート器具でありながら使う人にポジティブな印象を抱かせる。機能、ビジュアル双方にデザインの力が発揮され、多くの人に受け入れられているこの製品は、サポート器具や医療器具の領域に、まだまだデザインの力が必要とされていることを教えてくれる。
審査員講評:健康維持を手軽にサポート
バックジョイは、普段の姿勢で座ると自然に骨盤から背骨の体幹を整えて座ることができる機能設計で、使う人にコツの習得や技術を要さずに、初めてでも簡単に使える点が優れています。その他薄型軽量のため、手持ちの家具を買い換えることなく使え、持ち運びに負担をかけないこと、比較的安価なため家と仕事場など複数購入の負担が少なく、使用する環境を整えやすいことなど、使い続けることに繋がる工夫が施されています。フォルムは柔らかい曲面でできた軽やかな仕上がりのため、カラフルな色と合わせて、スポーツ用具のような軽快さを与えてくれます。腰痛や姿勢が悪いことから起こるさまざまな障害は、多くの人が抱える現代病ともいえる問題です。それを手軽に整えられることで、健康維持のサポートと生活の質の向上に繋がっています。機能、インターフェイス、ヴィジョンとトータルによく考えられた良いデザインです。
廣田尚子(ひろた・なおこ)
プロダクトデザイナー、ヒロタデザインスタジオ代表。プロジェクトマネジメントの視点からデザイン開発を行い、企業の持つ技術や素材の魅力を引き出して拡げる仕事を、日用品のデザインを中心に幅広く展開。
詳細はこちら http://backjoy-jp.com/