日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

経営を変える広報

日本酒業界の常識を覆せ、白鶴酒造が挑む「全員広報」

白鶴酒造 嘉納健二代表取締役社長

「和食」の無形文化遺産登録を好機とし、文化としての日本酒の魅力を再アピールする白鶴酒造。嘉納健二社長は11代続く歴史に価値ある伝統を重ねる経営に挑んでいる。

img01

白鶴酒造 代表取締役社長 嘉納健二氏(かのう・けんじ)
1971年生まれ。学習院大学経済学部卒業後、95年に白鶴酒造入社。99年社長室長を経て、2001年6月に代表取締役社長。現在は灘五郷酒造組合の理事長も務めている。

日本酒業界の常識を覆す

白鶴酒造の創業は1743年。本社のある神戸市東灘区は、「灘五郷」と称される日本酒の生産地のひとつで、いまでも酒造メーカーの本社や工場が集積しています。また、当社の主力商品である「まる」シリーズは国内清酒市場で売上トップのブランドです*。

*インテージMAI調べ 日本酒 2013年1月~12月累計販売金額(全国SM/CVS/酒DS計)

私が11代目の経営者となって13年になりますが、大学卒業まで東京で過ごしましたので、地元や業界のことを外から客観視するような感覚を保っているつもりです。もちろん、先人たちが大切にしてきた経営理念や技術者が継承してきた高い技術など、守るべきものは守りますが、一方で、新しいことに挑戦していかねば、価値ある伝統を生み出せないとも感じています。

当社には、同業他社に先駆けてCIを導入し、新しい技術や設備を積極的に採り入れるなど、常にその時代にふさわしい酒造りを目指す社風が根づいています。発売から30周年を迎えた「まる」も、時代に合った酒質開発のみならず、赤地に丸印を大きく描いたパッケージデザインやネーミングの斬新さでも業界の常識を覆し、新たな日本酒ファンを増やすことに成功したのです。

高度成長期の宴会需要が大きかった時代に比べて、日本酒の消費量が減少傾向にある事実は否めません。しかし、「ハレの日に飲むもの」から「日常の食卓を豊かにするもの」へと位置づけが変われば、まだまだ新たな消費を開拓していくことはできるはず。「まる」は、まさに宴会需要から家庭で親しまれるお酒として誕生した商品ですので、販売促進や広報宣伝を工夫すれば、新しいマーケットは拓けると思います。

かつては、消費者向けにテレビCMを中心とした宣伝を行う一方、取引先酒販店に顔を出す営業担当者が、販促用に作成したPR誌を持参するというやり方が主流でした。しかし、酒販免許の緩和から、スーパー、コンビニ、ディスカウントストアなど販売チャネルが多様化したことにより、お客さまとのコミュニケーションのあり方も変わってきたこと、インターネットの普及で紙媒体の効果が薄れていたことから2002年にPR誌を廃刊。代わりに、ウェブサイトからの情報発信を強化してきました。

やはりメーカーですので、商品に関するコンテンツを充実させようと、「まる」のテレビCMに登場した「いちご煮」「イカのポンポン焼き」などのレシピとロケ地のご案内などを掲載しています。これまでの広告のように和服の女性が熱燗を注ぐ…というステレオタイプのイメージを描くのではなく、漁港を舞台に郷土料理と日本酒の相性の良さをアピールしてきました。2014年8月から運用を始めた公式Facebookページでもこの流れを引き継ぎ、食との相性や飲み方の提案などを紹介していきたいと考えています。

「和食」文化の名脇役として

img02

9月に帝国ホテルで開催された「まる」の30周年記念イベントから。左から嘉納社長、「菊乃井」の村田吉弘氏、「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三氏、「Wakiya一笑美茶樓」の脇屋友詞氏。当日は報道関係者のほか、ブロガーを招いた。

去る9月4日に東京で行った、「まる」の発売30周年記念イベントでは ...

あと59%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

経営を変える広報 の記事一覧

日本酒業界の常識を覆せ、白鶴酒造が挑む「全員広報」(この記事です)
なべ焼きうどんのキンレイ・和田博行社長「広報は社内の合意形成から始まる」
「ウェブ会議サービス」専業の強み、ブイキューブのアジア進出拡大へ
オンライン英会話で初上場、レアジョブ・加藤智久社長「取材はビジョンを伝える場」
横浜にシェアスペース「BUKATSUDO」オープン、リビタの戦略的広報
牛乳石鹸・宮崎悌二新社長「広報は伝える力の源泉になる」

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する