NFTやメタバース空間での経済活動において、クリエイターは重要な役割を担うとされている。しかし、彼らを主役にしたクリエイターエコノミーの創出には、あらゆる面での環境整備が必要だ。さまざまな現状課題の解決を目指す経済産業省 コンテンツ産業課から課長補佐の上田泰成氏が、日本経済の「失われた30年」を取り戻すWeb3.0時代の新たな経済圏について解説する。
新たな経済圏で価値を生む「クリエイター」の存在
昨今、「Web3.0」「NFT」「メタバース」という言葉をビジネス領域でも目にする機会が多くなってきたと思います。これらはインターネットの進展の中で生まれた単なるトレンドワードではなく、日本経済の「失われた30年」を取り戻す勝ち筋となるテクノロジーであることを忘れてはいけません。
なかでも、NFTやメタバース空間を活用することで創出されるクリエイターエコノミーは日本が世界において大きな競争力を発揮し得る可能性を秘めています。NFTビジネスでは、NFTとなるコンテンツをつくり出すクリエイターやアーティストの存在は欠かせません。その点で言えば、すでに日本発のアニメ、漫画などのサブカルチャー的なコンテンツは世界的な支持を得ていますよね。すでに持っている強い領域をさらに伸ばすことで、日本の成長戦略として活用可能性が拡がるのです。
一方、メタバース空間を活用したビジネスでも、バーチャル上の建造物をデザインしたり、アバターに着せる服をつくったり、その空間そのものを構成する要素を創出するクリエイターの存在は不可欠です。
つまり、Web3.0時代のビジネスで大きな価値の創出を担うクリエイターへ、その対価を与えられる構造をはじめとする経済圏をつくり出すことが、Web3.0やメタバース関連領域を進展させる上で大事になると言えるでしょう。
しかし、先述したクリエイターエコノミーの創出やその普及には、現状、国内の法律や規制において曖昧な部分が課題として存在しているのも事実です。主役であるクリエイターも現段階で、この領域に知識を持っている人は少ない。さらに、NFTビジネスを海外展開する際の諸外国の市場状況が明確になっているわけでもありません。一般ユーザーにおいてもNFTの売買やメタバース空間での生活に参入する障壁の高さが課題になっています。
つまり、Web3.0時代に展開できる理想像と現状には大きな乖離が存在しており、そのギャップを埋めない限りはWeb3.0時代の勝ち筋であるクリエイターエコノミー創出のスタートラインにも立てないのです。
Web3.0のありたい姿へ 実現に向けた4つのAction
この理想と現状の乖離をなくし、クリエイターをはじめとした生活者がWeb3.0時代にビジネスを展開できる環境を整えるために経済産業省で立ち上がったのが...