インターネットの特長である越境性は、Web3.0時代にさらに高まりそうだ。NFT施策を実施する総合スポーツ用品メーカーのミズノでも、海外へのアプローチを視野に入れている。しかし、社内にNFTの有識者がいないことや国内での市場状況を考慮すると、なかなか実施に踏み切れない企業も多いのではないだろうか。ここではミズノのNFT施策を担当する太田友宏氏が実施した際の経験をもとに、担当者が知っておきたい活用可能性を考える。
3種類 計19点のNFTを販売 新たなブランド体験提供を目指す
NFTの活用はグローバルで事業を展開するスポーツ用品メーカーでも進んでいる。大阪に本社を置くミズノは2023年2月、デジタルアートをNFT化した「MIZUNO NFT COLLECTION」の販売を開始した。NFT化されたアートは、販売サイトOpenSeaにてオークション形式で販売された。
今回、NFTとして発売したのは3カテゴリー、計19点のデジタルアート。それぞれでスポーツ種目やNFTを所有することで得られる価値は異なっている。
まずひとつが、日本の伝統的なスポーツである柔道にフォーカスしたデジタルアート「MIZUNO JUDO ALL JAPAN」。有名なアーティストRyokke Draw氏が創作。アートとしての価値を前面に押し出しているNFTだ。
2つ目がランニングシューズ「MIZUNO WAVE REBELLION PRO」の限定色をデジタルアート化したNFT。落札した購買者にはNFT化している商品の実物を手に入れることができる権利を付帯。同商品の限定色は発売されていないため、世界に1足だけのシューズを手にすることができる。
そして、サッカーシューズ「MIZUNO α」のデジタルアート。昨年11月にグローバルローンチした世界戦略モデルのNFTだ。
直近で開始した施策だが、ミズノでは実施の約1年前から企画を開始していた。担当者の太田友宏氏は、デジタル技術の発達で社会や生活者の価値観も変化する中、それらの技術をチャンスとして活用するために何ができるかを模索していたと話す。
「私たちミズノがこれまで発揮してきた価値は、プロダクトやアスリートとの関係性、主催のスポーツイベントなど、実物として存在する有形のものであったり、リアルな世界に存在するものがメインでした。つまり、モノや人などを通じて価値を伝えることが主流だったのです。しかし、技術の発達によってそれらをモノとしてではなく、NFT、そしてアートとして...