NFTやトークンを活用した施策は、ファンとの関係性構築やブランディングを目的に実施されることが多い。なぜ、ロイヤルティの向上にNFTが寄与するのか。ブランドトークンの活用にいち早く目をつけたサッポロビールの事例から、Web3.0時代に変化するファンマーケティングの在り方を読み解く。
ブランドパーパスと事業方針がトークン発行を後押し
サッポロビールは2021年11月、ビールブランドの「SORACHI1984」にてブランドトークン発行の取り組みを開始。日本では比較的早い段階からトークンの活用に着眼し、Web3.0時代のマーケティング施策を行ってきた。
「SORACHI1984」の取り組みは、デジタルウォレットの開設やトークンの交換・取引が可能なマーケットプレイスを展開する24karatという企業が運営するプラットフォーム上で実施している。「SORACHIトークン」をプラットフォーム上で発行し、一定数のトークンを集めた生活者は、ブランドに関連したデジタルグッズやNFTと交換できるという仕組みだ。
トークンは、SNSで同ブランドについての投稿をしたり、アンケート回答、ファンミーティングに参加するなどした生活者に限定配布。SNS投稿においては、ユーザー自身がNFT配布プラットフォームで投稿したことを知らせることで、トークンを受け取ることができる。
「SORACHI1984」が施策を開始したのは2021年。NFTやトークンなどの用語自体の認知度が、現在よりも圧倒的に低く、国内では他社事例も少ない状況だった頃だ。そんな中でサッポロビールは、なぜ実施に踏み切ったのか。
施策を担当する新井健司氏によると、きっかけは、これまでよりも深いファンとの結びつきを生み出したいという想いだったと話す。
「本施策はブランドとファンとの関係性をより強固にする目的で行っています。『SORACHI1984』はもともと、サッポロビールの中でもユニークなブランディングを行ってきたこともあり、熱狂的なファンの方から支持をいただいています。そこで、ファンの方々とブランドをより強固につなげられる手段を考えたところ、NFTやトークンの活用に着眼しました。また、当ブランドのビジョンは『冒険しよう。』。可能性があるなら、試してみよう(冒険してみよう)という気持ちで始めたのがきっかけです」(新井氏)。
また、サッポロビールでは、2023年の事業方針で個性的なブランドと熱狂的なファンとの関係性を強化すると発表【図1】。本施策はこの...