広告マーケティングの専門メディア

           

Web3.0時代のマーケティング

新たに拓かれるWeb3.0時代は社会、マーケティングをどう変えるのか

林 雅之(国際大学GLOCOM)

ここ数年、トレンドワードとして語られることが多い「Web3.0」。昨今のChatGPTのようなジェネレーティブAIの登場や国内外のNFT、暗号資産の取引の隆盛を見ると、ただのトレンドでは済まされなくなってきた。待ったなしと言えそうなWeb3.0時代の到来は、日本社会の何を変えるのか。国際大学GLOCOM客員研究員の林雅之氏が、政策や産業界の方向性と照合しながらマーケティングへの可能性を解説する。

※政府が「Web3.0」と整理しているため、ここではWeb3.0と表記する

「Web3.0」とは どんな要素で構成される世界なのか

ここではまず、Web3.0とともに語られることが多い用語にも触れながら、Web3.0とは何かを解説していきます。

Web3.0とは、まだしっかりと定義されていませんが、一般的にはブロックチェーン技術などを基盤とする分散型インターネットの概念を指しています。GoogleやApple、Meta、Amazon、MicrosoftなどGAFAMと呼ばれる少数のプラットフォーム事業者による価値寡占構造となった「中央集権」のWeb2.0に対して、Web3.0はブロックチェーンを活用した「分散型」を志向する「永続的」なシステムです。

先述のブロックチェーンとは、「ブロック」と呼ばれるデータの単位を「チェーン」(鎖)のように連携し、取引内容や履歴を記録・保存する技術です。ブロックチェーンはユーザーの過去の取引データを企業の垣根を越えた複数のデータベースやシステムに分散して記録することができるため、改ざんや偽造が困難だと言われています。同じくよく耳にする言葉である暗号資産はブロックチェーン上で発行・流通されるデジタル資産のことです。

そして、Web3.0で重要な位置づけのひとつとなるのが、スマートコントラクト。スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で稼働するアプリケーションやサービスで発生する契約や売買などの取引を、人手を介さずに自動で契約が履行される仕組みです。

また、Web3.0では、主に新しい組織運営の形「DAO:分散型自律組織」や、新しい資産の在り方・取引を実現する「NFT:非代替性トークン」、そして、新しい金融の「DeFi:分散型金融」などから構成されます。

DAOとは、中央管理者がおらず、個の参加者同士で管理する組織。株主などのステークホルダーに限定されず、誰でもプロジェクトにコミットできる分散型の組織です。DAOでは、プロジェクト主からインセンティブや富を参加者に再分配することができ、多様性が確保されたフラットでイノベーションを生みやすい組織を創出できる可能性が期待されています。

一方NFTは、ブロックチェーン上で発行されるデジタル上のデータやアート作品などが、代わるものがない「唯一無二」の価値があることの証明であり、トークンの1種を指します。これらのデータの所有権を示すことで、アーティストやクリエイターの新たな収入源になることも期待されています。

※トークン:ブロックチェーン上に刻まれたWeb3.0の価値交換媒体

そしてDeFi。これはブロックチェーン技術を用いた分散型のアプリケーション(Dapps)のひとつで、暗号資産(クリプト)による新しい金融サービスです。既存の金融と新しい金融が融合することで、新たな事業モデルの創造も期待されています【図1】

図1 Web3.0の概要とWeb2.0との比較

新たに拓かれる 未知数の可能性を秘めた世界

先述のDAO、NFT、DeFiで解説したように、Web3.0進展においてはさまざまな可能性が期待されています。

経済産業省では2022年7月に大臣官房「Web3.0政策推進室」を設置し、2022年12月には「Web3.0事業環境整備の考え方」をまとめました。そこでは、Web3.0の可能性は未知数だが、税制・法制度・慣行などの事業環境を整備することで、Society5.0への貢献や、「国内投資の拡大」「イノベーションの加速」「所得向上」などの好循環につなげることを目指すとしています。

さらにWeb3.0の進展は、暗号資産やNFTなどのトークンを活用した新たなサービスの創業環境や消費活動、資産形成環境としての「トークン経済」が生まれることにも注目です。この「トークン経済」の誕生には、トークンの価値上昇が大きく関係します。価値が上がればトークンに対して金銭的なリターンが発生し、経済が動き始めるのです。

さらに、Web3.0における企業のプロジェクト進行では従業員や消費者が積極的にコミュニティ化を進め、コミュニティを構成する生活者自身が「プロジェクト価値の向上に貢献する」という働きが高まります。先述のDAOは、このコミュニティにあたるもの。これにより、サービスの消費が促進され、トークン価値の向上につながるトークン経済の好循環も期待されています。

トークン経済の発展は社会にどう影響するのか

トークン経済の発展に...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

Web3.0時代のマーケティング の記事一覧

メタバース浸透後、生活者の価値観はどう変わるのか
Web3.0時代、生活者の消費判断軸は「資産性」の有無に
NFT活用で拡がるミズノファンへの新しい価値提供
カルビーがNFT配布施策でゲームに着目した本当の理由
サッポロビールの施策から学ぶ、NFTがファンマーケに役立つ理由
NFTビジネス拡大の鍵「クリエイターエコノミー」をどう創出するか
ポストクッキー時代、サードパーティーデータに代わる「トークングラフ」とは何か
マーケター必見 Web3.0時代に変わる顧客との関係性とデータ活用
Web3.0時代は日本の経済成長のチャンス 鍵は「資産価値の最大化」
新たに拓かれるWeb3.0時代は社会、マーケティングをどう変えるのか(この記事です)
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する