広告のメッセージを深掘りすると見えてくる社会の問題 「歴史」というオブラートで包み、新たな視点を読者に与える
『童の神』『八本目の槍』や直木賞受賞作品『塞王の楯』などの作品で人気の歴史小説家、今村翔吾さん。2021年から書店経営も行い、2024年4月には、シェア型書店「ほんまる」もオープンした。「広告はネタの宝庫」として着想を得ることもあると言い、自らも広告を手掛けてみたいと話す今村さんに、広告のクリエイティブに期待することについて聞いた。
私の広告観
3月に発売された、若手デザイナーと敏腕コピーライターのコンビの奮闘を描くお仕事ロマン小説『広告の会社、作りました』(ポプラ社)。著者である中村航氏は、なぜ広告産業を舞台に選んだのか。
「いい仕事、いい会社ってなんだろう?」。今年3月にポプラ社より発売された『広告の会社、作りました』は、若手デザイナーと敏腕コピーライターがコンビを組み、大手企業に挑む“青春×お仕事=波乱万丈バディ”小説。
主人公である若手デザイナー、遠山健一は、入社1年3カ月を迎えたある日、所属していた広告制作会社の倒産を告げられ、いきなり無職になってしまう。安定した再就職先を探していた健一だが、新たに出合った職場はコピーライター・天津功明の個人事務所。法人化していないフリーランスだった。
天津とコンビを組むことになった健一。しかし、2人が挑むことになった仕事は、住宅会社のカタログデザインをかけた、大手広告会社との“出来レース”のコンペ。健一と天津は奇跡の逆転を起こすことができるのか?2人の姿を通して、「働くこととは?一緒に働く“いい相棒”とは?」が描かれていく。
本書の著者は、『100回泣くこと』、『デビクロくんの恋と魔法』、『トリガール!』など多くの作品を生み出してきた中村航氏。『広告の会社、作りました』は、中村氏にとって、いわゆる初の“お仕事小説”作品となる。お仕事小説に挑むにあたり、「起業」と「広告会社」の2つのテーマを描きたかったと中村氏。
「『起業』というテーマに関しては、私自身が会社を立ち上げた際に感じた面白さを書きたいと思ったことがきっかけです。働き方改革やコロナ禍により、現在は、多様な働き方が生まれています。では、実際にいま働いている会社を辞めたらどうなるのか?そんなことを考えている人も多いのではないかと思い、私が経験した面白さをありのままに書いてみたいと思いました」と話す。
「お仕事小説」の舞台に「広告会社」を選んだのはなぜなのか?「実は昔からの友人に、独立して広告会社を立ち上げた人がいて。以前から身近な存在でした。仕事に関する話を聞くことも多いのですが、彼も小説に...