パーソナルデータの管理意識が高まる昨今、企業が顧客にデータを提供してもらうには、これまで以上に信頼関係が重要となる。デル・テクノロジーズでは2016年に会員プログラム「デル アンバサダープログラム」を開始。本プログラムにより生まれた同社と会員顧客の関係について、マーケティングを統括する横塚知子氏に聞いた。
会員数は4年半で2万人超「デル アンバサダープログラム」
パソコン市場に、メーカー直販という新しいビジネスモデルを創出したデル・テクノロジーズ。1989年の日本市場での事業開始以来、国内においても直販だからこそ取得が可能な顧客データを活用したマーケティング活動を行っている。
コンシューマー&ビジネスマーケティング統括本部の部長を務める横塚知子氏は、同社のデータ利活用における姿勢について「何を解明したくてデータを使用するのかを明確にすることを社内で徹底しており、目的に応じてデータを俯瞰で見て傾向を分析するマクロの視点と、個々の詳細なケースを読み解くミクロの視点の両方を使い分けている」と話す。直販という業態上、同社では膨大なデータの取得が可能。
しかし、すべてのデータを同じ粒度で収集し分析するのではなく、導き出したいゴールに応じて、全体感を見るか、細部までを深く見るかを判断した上で、データの取捨選択をしているという。
そんな同社が2016年12月より実施している取り組みが、会員制の「デル アンバサダープログラム」だ。このプログラムにより同社は、製品購入時のみの短期的な接点ではなく、長期的な接点を持つことで、ひとりの顧客に関するより深いデータの蓄積を可能としている。
アンバサダープログラムは「お客さまにリアルな体験を通して、生の声をデジタルの世界で発信していただく」をミッションに掲げており2021年6月時点で会員数は2万3771名に達した。先のミッションを達成するための肝となるのが、同社パソコンの主要製品「XPS」シリーズと「ALIENWARE」シリーズを1カ月間、無償で使用できる「モニタープログラム」である。
モニタープログラムでは、2カ月に一度、会員を対象にモニターを募集。応募者の中から審査で選ばれた会員にパソコンの実機を貸し出し、使用してもらうという取り組みだ。モニターは使用したモデルについての感想を、自身のSNSやブログで発信することが条件となっている。
アンバサダープログラムを開始する以前、同社ではマーケティング予算を100%「刈り取り施策」に投資していたが、年数を重ねるごとに次第に頭打ちに。顧客と関係性を築き、将来の顧客育成する「エンゲージメント施策」として始めたのが、アンバサダープログラムであった。
「アンバサダープログラムを開始した際は、モニタープログラムを...