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ユーザーの「信頼」が基盤のデータ利活用戦略

クッキー規制で必要な対応は「顧客」を主語とした価値創造

森 正弥氏(デロイト トーマツ グループ パートナー)

デジタル広告配信において活用されてきたサードパーティークッキーデータ。しかし、その利用は制限される方向に向かっている。いま、世界でどのような規制が起きているのか。そして、サードパーティークッキーデータが利用できなくなった際、どのような代替技術があるのか。デロイト トーマツ グループ パートナーの森正弥氏が解説する。

ユーザーデータ活用の広がり 個人情報の第三者共有に懸念

現代は、ビッグデータやAI等の先進技術に牽引されるデジタルの時代と言われ、DX(デジタルトランスフォーメーション)の意義が社会的に広く理解されるようになってきています。その起点となるのはデータの活用。人や企業の活動がオンラインにシフトすることで、取得可能なデータが増大し、それに伴ってデータ活用の試みは社会のあらゆる場面で行われるようになっています。

中でもマーケティングの領域でいえば個人の属性、行動、嗜好等のデータを用い、需要を捉えて広告配信や商品推薦を行うサービスが数多く登場しています。これらは企業だけでなく個人に便益を提供しているものの、ユーザーはどのWebサイトを見ても自分の行動に基づいたオススメ商品が表示される気味悪さや、預かり知らないところで個人情報が第三者の企業に共有されている懸念を抱くようになりました。

近年、ユーザー意識の変化やプライバシー保護の気運の高まりから、ユーザー行動を追跡したり、個人のパーソナルデータを企業間で共有することを抑止する動きが出てきています。象徴的なのは、サードパーティークッキーの利用を停止する一連の動きです。

長年、クッキーはインターネットにおける顧客とのインタラクションを支えてきた技術です。当初はユーザーのWebサイトへのログインやECサービスでの買い物かごへの商品の保存等、状態保持に使われるファーストパーティークッキーが中心でしたが、後にユーザー行動を追跡する“サードパーティークッキー”なる用法が拡がりました。サードパーティークッキーは広告ネットワークが詳細なユーザーのセグメントと属性情報を提供し、個人の関心を捉えることに貢献してきました。

ですが、プライバシー保護の議論が進み、サードパーティークッキーの利用を規制する動きが始まっています。2018年にEU「一般データ保護規則(GDPR)」、2020年に「カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)」が施行されました。

その中でクッキーは個人情報と位置付けられ、Webサイトやモバイルアプリにおける追跡技術に関する規制が強化されています。また技術的な部分での制限も進み、2022年末までに順次、主なWebブラウザはサードパーティークッキーに対応しなくなります。

サードパーティークッキーが使えなくなるからといって、すべてのクッキーの用途が制限されるわけではありません。例えば、前述したログイン状態の保持や買い物かご内の商品格納、サイト内でのユーザー行動を解析するアナリティクストラッキング、広告からの転換率を計測するコンバージョントラッキングについては、ファーストパーティークッキーとしての活用で実現可能なため、影響を受けません。

問題となるのは、サイトをまたいで企業間に共有される追跡手段としてのクッキーの用法であり、DMPによるターゲティングやリターゲティングが該当します。

これは、個人を特定するデータの第三者共有を禁止しようというプライバシー保護の動きに沿ったもので、クッキーに基づいた広告ネットワークにおける個人向け広告の配信は今後、困難になります。

プラットフォーマー各社の対応 クッキー以外の追跡手段も抑止

世界的なサードパーティークッキー利用規制の方向性に対応し、プラットフォーマー各社は先行して施策を展開しています【図表1】

図表1 サードパーティークッキー利用規制による、プラットフォーマーやアドテク企業の対応

Googleは、広告のターゲティングとプライバシーを両立させる「Privacy Sandbox」というプロジェクトを2019年から開始しました。Chromeブラウザ内における広告ターゲティングを行いつつ、不適切な追跡を減らしていきます。また、Chromeによるサードパーティークッキーへの対応を2022年までに打ち切るとも明言しています。

Appleは、2017年SafariブラウザにITP(Intelligent Tracking Prevention)を実装しました。ITPとは、追跡を抑止する機能のこと。クッキーがクロスサイトトラッキングを行っているかを機械学習で判定し、制限対象を判断します。当初は、ファーストパーティークッキーを用いた迂回手段もありましたが、Appleによる継続したITPアップデートで迂回手段も封じられ、クッキーでの追跡は難しくなっています。

クッキー以外の追跡手段も抑止されています。例えばIDFA(Identifier for Advertisers)がそのひとつです。IDFAは、iOS端末に割り当てられる広告用IDですが、AppleはIDFAを用いた広告配信も制限します。2021年4月のiOS14.5の更新でATT(App Tracking Transparency)という...

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