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ユーザーの「信頼」が基盤のデータ利活用戦略

データを預けてもらってこそ事業が成り立つ コロナ禍の2021年は「情報銀行元年」に?

井上貴雄氏(一般社団法人 日本IT団体連)

クッキーの利用規制やApple、Googleなどの巨大プラットフォーマーがデータ利用の制限を表明する昨今、注目が集まっているのが「情報銀行」だ。日本における情報銀行の取り組みの現状と、今後の展開について一般社団法人 日本IT団体連盟理事であり、情報銀行推進委員会 委員長の井上貴雄氏が解説した。

情報銀行のコンセプトは「データの主権を生活者に戻す」

情報銀行は、生活者からパーソナルデータを預託された事業者が、データを活用したい他の事業者に提供する事業だ。情報銀行を運営する事業者は、日本IT団体連盟から任意で認定を受けることができる。

事業者は、同連盟の情報銀行認定を受けるにあたり、高度なセキュリティ環境を保持することが義務付けられている。データの主権を生活者の手に委ねようとする潮流が世界的に起きている今、情報銀行は生活者にとっては安心・安全にデータを預けられる場所のひとつと言える。

しかし、現行の情報銀行を取り巻く状況には課題も多いと日本IT団体連盟理事、情報銀行推進委員会委員長の井上貴雄氏は指摘する。

「情報銀行のコンセプトは『データの主権を生活者に戻し、活用の同意をもとに第三者提供を行うこと』にあります。世界的に、主権を生活者の手に戻そうという流れがある中で、日本では官民一体となって、情報銀行の仕組みを構築し、生活者の理解も得られるデータ利活用を推進したい方針です」(井上氏)。

スマホ利用が当たり前の時代 情報銀行利用意向も高まる

個人情報データの扱いに関する規制の内容は国によりさまざまだ。2018年よりGDPRを施行している欧州では、企業の活動を大幅に制限する方針にあるが、中国のように、むしろ国をあげてデータを収集・管理・統制していくケースもある。米国ではカリフォルニア州で2020年よりCCPAが施行されたが、世界のデータを多く保有する巨大プラットフォーマーを要する国の環境から、欧州に比べれば、企業に対する規制の度合いは低いともいえる。

21世紀の原油ともいわれるデータの利活用の方針は、今後の日本の国際競争にも影響する大きなテーマ。では、日本における規制・活用の方針はどのような方向に向かっていくのか。そのひとつの方向性として構想されたのが、情報銀行である。

同連盟が現在、認定を付与した情報銀行の企業数は7社。うち、マーケティング領域に特化しているのは2社で、生活者のECでの購買履歴や価値観アンケートの結果などの情報をメインに扱う。便益的には利用者にあわせた1to1マーケティングの促進が主だ。現在の情報銀行の認知度や利用意向について...

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