「人生100年時代」を迎えつつある日本社会。ファッション市場にはどのような変化が起こっているのか。シニア女性層を中心に人気の雑誌『ハルメク』編集長の山岡朝子氏に話を聞く。

シニア女性誌で発行部数No.1(日本ABC協会調べ)を誇る、『ハルメク』。
ライフスタイルや価値観は歳を重ねても変わらない
雑誌不況と言われる中で、50代以上の女性を中心に絶大な求心力を持つ定期購読誌『ハルメク』。リサーチ専門部隊による綿密な読者ニーズの調査・分析に基づきながら編集制作される『ハルメク』は雑誌事業のほか、読者イベントの開催やカタログ通販、さらには実店舗経営まで多面的なビジネスを展開する。『ハルメク』は定期購読専売のモデルを採っているために、購読会員の31万人ほぼすべての居住地や属性などのデータを保有していることも、新サービス開拓に生きている。
シニア女性層から熱烈に支持される『ハルメク』。実際の購読者はシニア世代が中心だが、実は同誌には雑誌内に「シニア」という言葉を使わないという方針がある。その理由について、編集長の山岡朝子氏はこう語る。
「今の60代、70代は、自分たちをシニアとは思っておらず、シニア向けの記事を自分ゴト化しづらい傾向があります。一方で、将来を見据えて"備えたい"という意識は顕著です。そのため雑誌では『シニア』という言葉を使わないようにしつつ、年金受給が始まる前後の読者を想定した誌面づくりを意識しています」(山岡氏)。
そう語る山岡氏だが「『ハルメク』が"50代からの女性誌"と謳ったり、年金世代を意識した企画の立案を行っているのは、あくまで便宜的な必要性からであって、本来はシニアを年齢で区切るのはナンセンスだと考えている」とも指摘する。ひと口にシニアと言っても年齢の幅は、長寿命化により広がったからだ。
「60代や70代になったからと言って、それまでその人が大切にしてきたもの、すなわち価値観やライフスタイルが変わるわけではありません …