長年にわたり牛乳の宅配サービスを提供してきた明治は、定期的に高齢者の自宅を訪問できる利点を活用し、商品配達と同時にシニア層の健康状態を見守るサービスで事業拡大を目指している。食から健康を支える、宅配サービスの可能性について同社の小池康文氏に聞いた。

宅配サービスで提供している宅配専用商品(上段)と、医療現場でも使用されている栄養食の「メイバランス」シリーズ(下段)。
250万軒の世帯に配達 うち7割が60代以上のシニア層
1928年に開始した、明治の宅配サービス。コンビニエンスストアやスーパーマーケットの登場、さらにECの普及によって一時は業績が落ち込んだものの、宅配専用商品の開発や、営業力の強化により業績はV字回復を果たす。現在は3000の販売店が、全国約250万軒に配達をしている。
「宅配サービスで顕著なのは、年々、顧客の高齢化が進んでいること。10年前には50%だった60代以上の利用者は、現在は70%にまで割合を伸ばしています」。
こう語るのは、宅配サービス事業を担当する明治の小池康文氏。従来のメインターゲットはアクティブシニア層だったが、利用者の年齢分布の変化に伴い、現在はアクティブとも言えず、要介護状態でもない「ギャップシニア層」を重点領域として捉えているという。
ギャップシニア層は、自分がやりたいことと自分の体力でできることの間にギャップがあり、自ずと家の中にいる時間が長くなる傾向がある。そのため、社会とのつながりも希薄化しやすく、情報の取得や制度の利用も消極的になって、予防できないまま要介護状態になってしまうケースが多いのだと小池氏は話す。
「2025年には、日本の就労アクティブシニアが約744万人、非就労アクティブシニアを含めても約1195万人であるのに対し、ギャップシニアは約1045万人にものぼると推定しています」(小池氏)。
そこで近年、明治は元気に動けるシニア層だけではなく、ギャップシニア層をメインターゲットに据え、単に牛乳を届けるだけではなく"要介護になる前"に健康上の課題を解決する役割を担うため、新たな取り組みを始めている …