時代の大きな変化に対して、ブランドの在り方も変化している。消費、世代、テクノロジーの新たな潮流に対して、マーケターはどのように考えていけばよいのか。『すべての企業はサービス業になる』の著者である室井氏が解説する。
POINT
POINT 1 すべてのメーカーがサービス業へと進化していくべき。
POINT 2 企業には人としての振る舞いが求められる。
POINT 3 ブランドは人として周囲との良い関係を築く時代に。
ブランドは「振る舞い」が問われる時代に
ブランド=人という考え方は、これまでのブランド戦略と変わりません。加わるのは「振る舞う」という言葉です。これまでもこれからも、ブランドは「らしさ」を定義することから始まります。しかし、顧客コミュニティの評価がブランドの選定に影響を及ぼす時代では、自分が思う自分の理想をデザインし、発信していくという旧来のブランド戦略は成立しません。
コミュニティと良好な関係を続けていくことを前提に、等身大で誠実なブランドをデザインし、顧客と付き合い、振る舞っていく必要があります。このような時代に向けた変化は、いくつかの理由とともに実現のフェーズに入っています。
ブランドが変化する大きな3つの理由
理由①:モノからコトへ
モノからコトへの変化とは、一般的には消費の対象がモノを買うという行為から、コトを買う行為へ移ったことと言われます。例えば「車を買う」のではなく、車があることで実現する、「旅行に行く」というコトに対して消費者の意識が向いているという変化です。
しかしモノはそもそもコト(行為)が物質化した状態だと僕は考えます。例えば、車を買ってそれを家に置いておくだけではあれば車はモノです。しかし顧客が本来買ったのは車というモノではなく、車が与えてくれるコト(行為)です。例えば、ひとりで爽快な気分で海に行きたい、仲間たちとキャンプへ行きたい、家族で温泉に行きたい等、顧客が購入していているのは車ではなく、車により得られるコトであることがわかります。
コトの消費が目的であるならば、モノを所有しなくてもコトを手に入れることはできます。例えば車を購入しなくても、レンタルやシェアでも車が提供してくれるコトを手に入れることはできます。また、つい数年前まではサービスを利用すること自体に手間がかかりましたが、今ではモバイルから簡単にアクセスできる気軽なサービスへと変わってきています。
故に、すべてのメーカーはモノこそ商品という認識から、モノがもたらすコトこそ商品という認識を持ち、サービス業へと進化していくべきです。サブスクリプションモデルの本質はモノのコト化にあると言えます。
理由②:消費をリードする世代の交代
日本ではまだまだ消費の主役は高齢者ですが、世界的にみれば消費の主役は現役世代であるミレニアル世代へと移っています(シンク・タンクのピュー・リサーチ・センターは2014年に、ミレニアル世代は1981年から1996年に生まれた人々と定義しました)。ミレニアル世代の最大の特徴は、デジタルネイティブであることです …