ブランディングとセールスは、本来は両輪を回して効果を出していくものであるが、なかなか連係を取るのが難しいという声も多い。本稿では、売上と収益に貢献するブランディングコミュニケーション施策について、インサイトフォースの山口氏が解説する。
POINT
POINT 1 ブランディングが売上につながる構図を知る。
POINT 2 目的によってクリエイティブを使い分ける。
POINT 3 ブランディングとセールスの施策は同時に並列で行うべき。
セールスを支援するブランディングのロジックを明確にせよ
「ブランド戦略は、大事かもしれないが、売上に直結していなさそうでわかりにくいし、いつから投資すれば良いのかわからない」。これは、マーケティング関係者の多くから耳にする本音であり猜疑心です。
ブランド戦略の実行は、ブランディングと呼ばれますが、ブランディングは売上に直結したセールスよりも、曖昧でわかりにくいものだからこそ、その投資と継続が難しいのが実情です。そもそもブランディングとセールスの違いとはなにか?どのように連係しているものか?まずは2つの施策の定義とその違いを簡単に説明します。
ブランディング施策とは、ターゲット層に向けて自社のブランドの認知獲得と、そのブランドから得られそうな価値(知覚価値)を記憶に残すことを目的にしています。そのため、ブランディング施策は、コミュニケーション施策にとどまるものではなく、顧客が触れる商品、サービス、デザイン、スタッフの接客など、あらゆる接点の施策で、ブランドの知覚価値が印象に残るように一貫性をもたせるのが基本です(施策ごとに発するメッセージ=印象が違ったら、顧客の頭に知覚価値が効率的に残りません)。
もう一方のセールス施策とは、ターゲット層に向けて購買の意思決定を促すことを目的にしています。ブランディング施策との重要な違いは、"将来に向けて"ではなく"今すぐ買ってもらう"ことに力点が置かれていること。今期…今月…今週…今日…と、顧客に意思決定をしてもらう時間軸を明確にした活動になることです。セールス施策のアプローチは、人同士の対面営業だけでなく、電話、eメール、DMもありますし、Webサイトで販売する企業であれば、ECの販売ページやLP(ランディングページ)もセールス施策の接点のひとつです。
セールス施策の成果を追求していくと、顧客にとっての優先度あるいは緊急度を高めるために、特典や割引などを期間や数量を限定した条件で提示し、素早くクロージングするために下世話に煽る表現が増える力学を持ちます。「今すぐ買ったほうが得をする」と思わせる限定条件を示すことが、セールスのクロージングを後押しするための最も単純で力強い方法だからです。
仮に、あるブランドについて「まったく知らない人」「ブランドを認知している人」「ブランド認知に加え、他よりも優れた特徴を知っている人」の3人がいたら、当然ですが、後者になるほど、セールス施策に触れたときのCVR(顧客転換率)は良くなり、高い価格でも買ってもらえるなど、取引条件も良くなります …