個人が情報発信できる、さまざまなメディアが浸透したことによって、インフルエンサーと呼ばれる発信力を持った個人を活用したプロモーション施策が増加している。インフルエンサーマーケティング施策は、ブランド確立に役立つのか。ブランド戦略の観点から、トライバルメディアハウスの池田氏が考察を語る。
POINT
POINT 1 インフルエンサーはストーリーテラーの役割が本義。
POINT 2 従来の広告やPRでは実現できない、共感による評判形成が真骨頂。
POINT 3 リーチ目的ではなく中長期的な活動として取り組むべき。
ブロガーから始まったインフルエンサー施策の変遷
「インフルエンサー」という言葉が日本で使われ始めたのは、ブログ全盛期の2006年頃だったと記憶しています。個人がメディアを持ち、自ら発信できるようになったことから、「人がメディアになった」と言われました。
その後、SNSの浸透によって、ブログ時代とは異なる情報の流れが生まれ、さらに個人の発信の影響力が増していきました。
こうした背景を考えると、今ほどインフルエンサーマーケティングを実施すべきであり、なおかつ実施しやすくなっている時代はないでしょう。消費者のメディアリテラシーは劇的に高まり、「広告にはだまされないぞ」と、時に懐疑の目をもって企業の発信を見る人も増えてきています。
このような環境においては、「誰が」発言している情報なのか、という「Who」の影響力が強くなります。有名人、友人や知人、特定領域でのオーソリティーなど、企業と直接的な利害関係のない第三者を信頼するようになっているのです。
そのため、マーケティング戦略として考えれば、その発信者がブランドの愛用者、ファンであることが肝要です。インフルエンサーマーケティングの本義は、企業・ブランドが発信する情報とは質の異なる物語を紡ぐストーリーテラーとしての役割を果たしてくれることにあるからです。
リーチ発想に支配されたマーケターの固定観念
そう考えると、インフルエンサーマーケティングは、ブランドのストーリーテラーとなるファンとの中長期的な「お付き合い」が重要であることに気づきます。しかし現状は、短期的な目標をもって「リーチを買う」という視点に陥っている企業が大多数です …