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今日的な課題を読み解く ブランド戦略の論点

ブランドの成長に貢献するイメージ調査と活用

鈴木 健氏(ニューバランス ジャパン)

ブランドイメージという言葉はよく使われるものの、その実態について深く掘り下げて議論する機会は少ない。本稿では、海外事例にも詳しいニューバランスジャパンの鈴木氏が、成果に結びつけるためのブランドマーケティングを解説する。

    POINT 1 ブランドイメージの調査、活用を捉え直す。

    POINT 2 独自のブランド資産を育成・活用する。

    POINT 3 メンタルアベイラビリティを増加させるためには、CEPを意識すべき。

ブランドイメージの調査は本当に実用的なのか

ブランドマーケティングや広告に携わる人であれば、一度はブランド調査なるものを自ら実施したり、あるいはその分析をもとにブランドの実態について検討したことがあるでしょう。ブランドの調査項目は、認知(そのブランドを知っているか)や好意度(そのブランドが好きか)や購入意向(そのブランドを買いたいか)というブランドの状態に関するものが一般的です。

これに加えて、そのブランドがどのように受け止められているか、連想するイメージや特徴を尋ねるのがいわゆる「ブランドイメージ」の調査です。それはグループインタビューであれば「かっこいい」とか「人気がある」のような印象を聞いたり、定量調査ではそのような項目にブランドごとにチェックを付けてもらったり、各項目について、1-5まで「そう思う」「そう思わない」といった評価をつけてもらうものです。

このイメージ項目の量的な差異を競合ブランドと比較することによって、自社ブランドがどのようなイメージを持たれているかを把握することはマーケターの常識でもあります。

しかしながら、このようなブランド調査をどのように活用していくか、あるいはそこから得られる知見が、どう役立つのか、といったことについては意外と実証的なケーススタディを聞いたことがありません。というのも、ブランドの認知のような確認しやすいステータスに比べて、ブランドのイメージ項目というのは、そう簡単に変化しないからかもしれませんが、いわゆる前述のような見方では実は把握できていない点が多いからだとも言えます。

ブランド論の構造から出てくる「ブランドイメージ」の抽象度

ブランド論で有名な人物はデビッド・アーカーやケヴィン・レーン・ケラーですが、彼らが図式で示す項目にストレートに「ブランドイメージ」のようなものはありません。なぜなら基本的にはブランドに関して消費者や顧客が認識しているものはすべて顧客の頭や心のなかに存在するものがベースなので、認知(知っている)や態度(好き、買いたい)のようなステータスを除いてしまうと、それ以外はすべてが不確かなぼんやりした記憶や印象や思い込みにすぎないからです。

アーカーの有名な用語に「知覚品質(perceived quality)」がありますが、この言葉が象徴的で実際の品質ではなく、ブランドが顧客に与えるイメージからなる品質、というものがブランド論では語られます。いわばすべてが現実(reality)ではなく虚像(image)であるというのが「ブランドイメージ」の基本にあるからです。

したがってブランド論の構造からはどの論者を見ても、顧客の頭や心の中にあるような想像的なイメージ領域と、具体的な特徴や歴史をともなう事実をごちゃ混ぜにしたような印象を受けます。

特に自分が広告会社時代に学んだブランドの構造は、「ブランドピラミッド」といわれる6つの層からなるもので、①特徴や属性のような具体的なものから、②機能的ベネフィット、③情緒的ベネフィット、④使用者の価値観、⑤パーソナリティ、⑥コア価値といった上位の抽象的な階層に上昇するようにできていました。このような形は同じくマーケターに有名な発達心理学者であるマズローの欲求5段階ピラミッドを思い出させます。

要するにこのような構造は精神分析や心理学の知識を背景にして、ブランドに人間の心や意識を反映しているのです。ブランド論にはそういった意味で人間の精神の比喩が多く、パーソナリティ(人格)のような用語や、ミッション(使命)やヴィジョン(達成すべき未来)のように、単なる顧客の頭の中のイメージを超えて、そのブランドの存在や意義を規定したものも広義では含まれてくるのです。

ブランド成長を阻みかねない「イメージポジショニングマップ」

ブランドイメージについて具体的な議論をしているマーケティング研究者としては、2018年に「AdverTimes(アドタイ)」のコラムでも取り上げたアレンバーグ・バス研究所のバイロン・シャープ氏やジェニー・ローマニアック氏です。彼らは『ブランディングの科学』のような著作で、例えば「ブランドパーソナリティ(ブランドの人格)」のような用語を批判して、ブランドを人間のような存在として見ている顧客はいたとしても少数である、と主張しています。

同様に、シャープ氏はよく広告会社がブランドイメージ調査の結果をもとにコレスポンデンス分析したイメージ知覚マップを用いて、ブランドイメージのポジショニンググループをつくって提案することにも否定的な態度を取っています。というのも、例えばヨーグルトやソフトドリンクなどの同じカテゴリーに属するブランド群というのは、そもそも顧客が重複していることで、ブランドイメージ項目も同じように重複しているため、イメージマップのような図は不必要に、わずかなイメージ差異を誇張して見せている、というのがその理由です …

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