「テレビCMが効きづらくなったからデジタルの活用を推進しよう」。そんな論調も聞かれるなか、そうした意見に疑問を呈するのはスマートニュース 執行役員 マーケティング担当の西口一希氏。担当者が考えるべき、テレビCMの効果を高めるクリエイティブ開発のポイントを聞きます。


女優の吉岡里帆さんを起用したテレビCMシリーズ。新テレビCMも3月31日より公開している。
あらゆる条件と情報を分析し最適解を見つけだす
私は、2017年にスマートニュースで現在の職務につきました。当時、スマートフォン用のニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」は、サービス提供の開始から数年経っているものの、思ったほど認知度が向上していないという課題がありました。
その一方で、「スマニュー」の愛称で親しまれるなど、すでに使っているユーザーの方々の満足度や評価は非常に高い。
コンセプトテストをしたところ、想定以上に認知は競合他社に比べて低かったのですが、まだ認知していない人にコンセプトを説明すると非常に関心が高いことがわかりました。自分の周りの人に勧めて使ってもらうと、やはり評価が高く出たため、まずは認知とプレファレンスを上げることで大きく成長できると確信しました。そこでマーケティングの課題は、どう認知とプレファレンスを高めるかという点に絞られていきました。
アプリというサービスの性格上デジタル施策は積極的に実施していましたし、テレビCM以外ではPRやマーケティングのメディア手法を用いるなど、多様な打ち手はすでに試していました。認知度向上という課題に対して、次なる打ち手となるのはテレビCMではないか。そう考え、2017年9月からテレビCM出稿の検討を始めました。
これまでメーカーなどに在籍していた時代には当然、テレビCMも使っていました。ただアプリというサービスにおけるテレビCMの活用方法については、まだそれほど業界に知見がありませんでした。そこで実験的な要素も含め、昨年9月からいろいろなメディアの入れ方、クリエイティブやフォーマットの組み合わせ、時間帯、エリアなどの情報をすべて可視化してみようと、細かく分析することを始めました。
アプリの場合、ダウンロード数が広告の効果を測る上で重要な指標です。ダウンロードという行動まで喚起するには、テレビとデジタルを組み合わせる動線設計も欠かせません。そこで、ここではテレビとデジタル施策の組み合わせも分析対象としました。
クリエイティブ、放映する時間帯、エリアなどの情報をどうデジタルと組み合わせれば良いかのパターンをいくつか出し、その最適化を図っていった結果、実際にユーザー数は大幅な伸びを記録し、タイミングもよく2500万ダウンロードを達成しました。一度、強い認知とプレファレンスをつくると、広告を出稿していない期間でもオーガニックで入ってくるユーザーも増えるので、今も継続的にユーザー数が伸びている状況です …