世の中に次々と登場するテクノロジーは、ブランド体験をどのように進化させてくれるのだろうか?ここでは、近年実用化に向けた動きが急速に進んでいる、2017年に特に注目したい2つの技術「VR」と「IoT」をピックアップ。その活用可能性の広がりを、専門家が解説する。
世界は「見る」から「体験する」へ
空間の共有という 新しいコミュニケーションの実現へ
2016年は、ソニーが「PlayStation VR」を発売し、Oculus、HTC ViveなどのHMD(ゴーグル型のディスプレイ)の製品が相次ぎ登場し、「VR元年」とも呼ばれた。これらの製品に加え、スマートフォンをボール紙で包んだ簡易HMDが登場し、VRの裾野は急速に広がっている。
VR(Virtual Reality)を学術的に定義すると、「物理的には存在しないものを、感覚的には本物と同等の本質を感じさせる技術」である。マスコミではVRのことを「仮想現実」と訳すことが多いが、「仮想」という言葉をここで使うのは間違いである。RealとVirtualの差は物理的存在の有無の違いだけであり、本質は等しくなければならない。現在VRの応用として着目されているのがゲームであるため、HMDに表示されるのは架空の世界である。ゲームに限って言えば仮想なのだが、VRの応用は本質的に実物と同等なものに大きな可能性がある。
実際のところ、VRという言葉が初めて登場したのは1989年のことであるため、VRは平成と同じ歴史を持っている。この言葉が登場した時にイメージリーダーだったのが、やはりHMDであった。さらに歴史を紐解くと、HMDが最初に開発されたのは1960年代に遡り、CGの生みの親と言われるアイバン・サザランドによるものであった。ゴーグルには映像表示デバイス(当時はブラウン管)を左右の眼に別々に用意し、レンズを通して画面が遠くにあるように提示した。さらに、ゴーグルの位置と姿勢を機械式のセンサーで測って、左を向けば左にある映像を、右を向けば右にある映像を表示することによって …