きめ細やかなサービスが顧客から高く評価されている全日本空輸(ANA)。それはデジタルマーケティングにおいても随所にあらわれている。搭乗前、搭乗中、搭乗後という一連のカスタマージャーニーにおいて、顧客体験の質を高めることを目指すANA。コミュニケーションのパーソナライズ化を推し進める同社のマーケティングを率いるリーダーに迫った。
メディア最適化から顧客最適化への方針転換
ANAのマーケティング全般を担うマーケットコミュニケーション部は、2012年に宣伝部とWEB販売部が統合される形で発足した。当時はトリプルメディアを活用したコミュニケーションを推進していた同部門だが、それから数年が経ち、メディアの最適化が進んできたところで、マーケティングをメディア軸ではなく顧客軸で考える方針へと転換。その方針が組織体制にも反映され、2015年4月に部内のWEBチームが現在のデジタルマーケティングチームへと改編された。宣伝チームが管轄していたSNSやメールプロモーションを移管し、デジタル領域全般にわたるコミュニケーションを担うようになったのだ。
マーケットコミュニケーション部のマネージャーを務める石川圭太氏は、「2014年頃に、国内でもデジタルマーケティングの重要性が言われるようになってきて、メディア別の縦割り組織を脱し、顧客を軸にしたマーケティングを推進していくことになりました。顧客一人ひとりに対して、適切なメッセージを、適切なタイミングに、適切なチャネルで届け、行動を喚起する――顧客とのコミュニケーションの最適化は全社の命題でしたので、これを実現するための手段として、デジタルマーケティングに注力する動きが生まれました」とチーム改編当時を振り返る。
石川氏は、グループ企業のANAセールスに入社後、約15年間にわたって旅行商品の販売など旅行事業に携わり、6年前にマーケットコミュニケーション部に異動した。現在は自社サイト「ANASKY WEB」「ANA SKY MOBILE」や公式アプリのプラットフォーム開発を担当するほか、デジタルチャネルの運用全般を任されている。
現在に至るまでに、デジタルマーケティングを取り巻く環境のさまざまな変化を感じてきたという石川氏。中でも、顧客接点のデジタルシフト・モバイルシフトによってもたらされた影響は大きいと考えている。「実は、国内線航空券のWEB決済比率は …