2015年4月、ジェーシービー(JCB)社内に新設された「WEB統括部」は、「顧客視点」「スピード」「データドリブン」を合言葉に、全社横断的にデジタルチャネル戦略を推進している。直近で実施した一大プロジェクトが、同社が運営するWEBサイト・アプリの一斉リニューアルだ。その取り組みからは、JCBが目指す顧客目線のマーケティングを垣間見ることができる。
企業起点から顧客起点へ WEBチャネルを統合・再編
2016年9月末現在、23の国と地域でカードを発行している、日本発の唯一の国際カードブランドであるJCB。会員数は1億会員、取扱店契約数は3100万件と、そのネットワークは国内外に広がっている。
会員や加盟店など、JCBのステークホルダーがアクセスする国内外のWEBサイトやアプリは100以上にのぼり、これまで事業や商品・サービス毎に運営担当部門が分かれていた。各部門が伝えたいことを、それぞれの視点(内容・表現)で発信していたため、ユーザーに対して一貫したブランド体験を提供できず、またアクセス解析に基づく改善も十分に行ってこなかった。
こうした問題を受け、2015年夏に全社横断的な改革がスタートした。JCBが運営する主要なサイトおよびアプリを全面リニューアルするプロジェクトだ。刷新したのは、グローバルサイトの英語版/日本語版と、ベトナム・インドネシア・香港・ロシアの国別言語に対応した各国サイト、国内の「JCBカードサイト」、会員専用WEBサービス「MyJCB」の公式アプリ。ユーザーの情報閲覧・検索行動をよりスムーズにするため、格納する情報・コンテンツをユーザー視点で再編し、電通CDCエクスペリエンス・デザイン部をパートナーにUI/UXを大幅に改善した。
具体的には、例えば「企業情報サイト」「パートナーサイト」「ブランドサイト英語版」と、これまで3つのサイトに分散していた情報を統合し、グローバルサイト英語版/日本語版へと再編した。また、JCBカードの会員や入会を検討中の人がアクセスする「JCBカードサイト」は、リニューアル前のユーザー動線を徹底的に分析。ユーザーが求める情報にストレスなく辿り着けるよう、ナビゲーションメニューとサイト全体を設計した。サイト内のレコメンデーションエリアも増やし、会員/非会員というステータスや、閲覧行動データなどでユーザーをセグメンテーションし、コンテンツを出し分けるようプログラムした。
さらに、トップレベルドメイン「.jcb」を取得し、グローバルサイトや各国サイトで使用。これには、JCBブランドとしての統一を進めることに加え、偽装・なりすましを防止する意味もある。単にブランド発の情報をわかりやすく届けるだけでなく、顧客が安心して利用できることもリニューアルの目的のひとつだった。
この一連のリニューアルを担当したのが、2015年4月に新設されたWEB統括部。部長の岡田良太氏は …