年間1450億円を超える売上高を誇り、回転寿司業界を牽引する、あきんどスシロー。2002年という早期から、店頭での需要予測や寿司の鮮度管理までをITで統合的に管理する「回転すし総合管理システム」を導入し、世界初の米国特許を取得した。億単位のデータを高速分析する仕組みが、マーケティングのアイデア発想と実行を支えている。

あきんどスシロー マーケティング部長 山本直幹氏(やまもと・なおき)
2003年10月、現プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン、CMK(消費者・市場戦略本部)入社。トイレタリー製品、電化製品、ヘアケア製品などを担当。2015年7月、あきんどスシロー入社、現職。マーケティング部長として、顧客/マーケット調査や分析、マーケティング戦略立案に従事している。
IT導入のきっかけは店舗運営の課題
あきんどスシロー(以下、スシロー)は、「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」を企業理念に掲げ、全国451店舗(2016年12月現在)を展開する大手回転寿司チェーン。すしの鮮度と味に対する徹底したこだわりが売上にも結びついており、年間売上高は店舗あたり約3億3000万円と、国内外食チェーンで最高レベルの水準を誇っている。同社の調査データによると、来店客数は1日平均約36万人、年間で約1億3000万人と、日本の人口にも匹敵する桁外れの数字だ。
日々蓄積されていく膨大な量のデータを分析し、具体的なアクションに落とし込む仕組みが、2002年に導入した「回転すし総合管理システム」だ。マーケティング部長の山本直幹氏にシステム導入のきっかけを尋ねると、「店舗運営における課題を解決したいとの思いが根底にありました。回転寿司において顧客の印象を最も悪くするのは、つくられてから時間が経ったネタがいつまでもレーン上を回り続けること。レーン上での走行距離が基準値を超えたネタを廃棄して鮮度を管理することに加え、需要を超えて無駄なネタを握らないという供給を管理する目的があり、全社施策として導入しました」と話す。同システムでは、寿司皿の裏面にICチップを取り付け、売れ行きやレーン上の走行距離など商品を単品管理するほか、レーン全体に流れる寿司の鮮度や売上状況をリアルタイムで把握する。例えば、どの店で、いつ・どのネタがレーンに流され、どれだけ廃棄されたのか。どの時間帯に何皿売れたのか。こうしたデータを年間10億件以上蓄積し、握りの指示や鮮度管理はもちろん、売上管理まで一貫してコンピュータで行ってきた。
スシローのIT活用は、このシステムを全国の店舗に導入することに止まらなかった。このシステムに …