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マイケル・ペインのTOKYO 2020 ストーリー

アンブッシュマーケティング(便乗広告)を仕掛けるライバルを打ち負かす

マイケル・ペイン

オリンピックやグローバルマーケティングに関して、世界一の権威であるマイケル・ペイン氏が、2020年東京オリンピック・パラリンピックに対する考えを語る特別連載。今回は、アンブッシュマーケティングの問題について検証します。

※アンブッシュマーケティングとは、公式スポンサーではない企業が、オリンピック競技や参加チームを支援することなく、オリンピックと公式スポンサーの独占的提携を弱体化させたり、オリンピックの恩恵を受けようとすることを指します。

独占権保護するスポンサー制度

オリンピックマーケティングの基本原則の一つに、独占権があります。どのスポンサーも、それぞれに指定された製品分野の範囲内で独占権を享受できます。安心してオリンピックムーブメントに投資ができ、自社のキャンペーンがライバル企業に出し抜かれることはないと確信できることが、オリンピックスポンサーシップの価値を高める重要な要因になってきました。同様に、オリンピックの運営組織は、オリンピックを存続させるために知的権利を保護し、オリンピック競技や参加チームを支援していない企業が、オリンピックからいかなる恩恵も受けることがないように、何らかの措置を講じる必要があります。オリンピックとのマーケティング提携が無料なら、多額のスポンサーシップ料を払う意味がどこにあるでしょうか。

オリンピックのスポンサーシップは、おそらく最も保護されたスポーツマーケティングの機会です。なぜなら、これまでIOCは、オリンピックのすべての権利を一つのマーケティング契約に集中させ、開催都市選考のはるか前に、オリンピック競技を連想させるあらゆる種類の広告を管理する対策を講じ、それを強化することに熱心に取り組んできたからです。「最強の防御はいい攻撃となる」といった考え方をベースに、IOCはオリンピックのガイドラインを破ったどんな企業や選手も厳しく罰する方針を貫くことで、この業界の手本となってきました。事前に決着をつけるという考えの下、オリンピック関係者内の秩序を保つことに努力を惜しみません。

オリンピックは、スポンサーに対して、大会やチーム、そして選手に関わる権利を組み合わせたマーケティングを提供している点で、他に並ぶことがなくユニークです。サッカーのワールドカップやその他の主要なイベントでは、一企業がイベントのスポンサーになり、そのライバル企業がチームのスポンサーをしていることがしばしばあります。これは1985年にTOPプログラムを立ち上げる前、オリンピックにも実際に起こっていました。1984年のロサンゼルス・オリンピックで、富士フイルムがコダックを打ち負かしてスポンサーになった時、コダックは慌てて米国のオリンピックチームや関連の国内競技連盟のスポンサーになり、2社共にオリンピックを利用したのです。こうした対立をなくすために、グローバルに独占権を持つIOCの世界的なマーケティングプログラムであるTOPが設立されました。スポンサーは、オリンピックはもちろん、南米ベネズエラの北西沖に浮かぶ島アルバからアフリカのザンビアに至る205の国・地域のオリンピックの代表チームに対する権利も獲得できます。

スポンサーを希望する企業が考慮しておくべき課題

オリンピックに関連したマーケティング機会の持つ影響力が、徐々に大きくなるにつれ、オリンピックとの提携から得られるベネフィットへの企業の関心も高くなってきました。スポンサーの権利を保護し、価値あるマーケティングプラットフォームを提供するために、オリンピックの様々な運営組織は、公式のマーケティングプログラムが開始されるはるか前から、組織自体をきちんと整理しておく必要があります。オリンピックの開催に立候補する都市にとって、スポーツのインフラを整備する計画は簡単ではありませんが、開催都市に選ばれた時に最も大変なのは、マーケティングプログラムの開発の準備に向けてIOCの広範囲の要求に応えなくてはならないことです。

オリンピックスポンサーの可能性を模索している企業は …

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