オリンピックと国際マーケティングの世界的な権威であるマイケル・ペイン氏が、2020年東京五輪に対する考えを語る特別連載。今回は、放送/メディア権、スポンサーシップ、サプライヤープログラム、認可商品、権利譲渡など、オリンピックのマーケティングの構造について概観します。誰が何を所有し、誰が何を販売するのか、インターナショナル権利に対するローカルの権利はどうなっているのでしょうか。

オリンピックの「所有者」とは
オリンピックマーケティングの全体の構造や運営を理解する一番簡単な方法は、フランチャイズ事業としてオリンピックを考えることです。オリンピックの「所有者」としての国際オリンピック委員会は、事実上の「フランチャイズ本部」であり、2020年東京五輪組織委員会は、「フランチャイズ加盟企業」です。
1964年に日本で五輪が開催されたとき、IOCの主な役割は主催する都市を選ぶことで、その後のことは、主催国の組織委員会にすべて任せていました。当時のIOC自体の事務局は、非常勤の役員一人と非常勤の事務員一人だけでした。1964年の五輪開催が決定した際の主催都市契約は、1ページしかありませんでしたが、2020年の主催都市契約は数百ページにおよび、契約の履行のレベルや、選手からメディアにいたるあらゆる利害関係者の質的基準を定めた説明書や付属書類がいくつもついています。まるでフランチャイズ店の運営のようです。
世界最大のフランチャイズ事業
今日、IOCは世界最大のそして最も専門的な国際スポーツ事務局を運営しています。スイスのローザンヌに本部のある事務局には500人以上の役員からなる専門スタッフがいて、オリンピック開催のあらゆる面に気を配り、常時、4つのオリンピック運営を監督しています。日本中の目が2020年の東京五輪に注がれていたときに、IOCは…