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マイケル・ペインのTOKYO 2020 ストーリー

世界企業とIOCのスポーツマーケティング

マイケル・ペイン

オリンピックやグローバルマーケティングに関して、世界一の権威であるマイケル・ペイン氏が、2020年東京オリンピック・パラリンピックに対する考えを語る特別連載。今回はオリンピックブランドの価値と位置づけについて検証します。オリンピックブランドが持つ独自性を理解することは、オリンピックマーケティングを成功に導く最初の重要なカギとなります。

ブランドの資産を構築するカギ

しばしば、スポーツは戦いの象徴と言われますが、本当は、平和を促すものです。オリンピックブランドは、スポーツの世界と平和への願いが交わるところです。そのような力は、他のどんなブランドにもありません。

『ビジネスウィーク』にオリンピックに関する記述があります。「夏季オリンピックの五つの輪の中をくねくねと進む洗練された線があります。これはオリンピックグッズを販売する一方で、人々の国家主義的感情を揺り動かし、国際的価値を牽引しています。要するに、IOCの洗練されたマーケティングプログラムは、独占多国籍企業に数億ドルを請求することで世界平和促進の権利を委託しているのです。私たちはランニングパンツを身に着けた外交官です、と人々に呼びかけ、すべてを善良で純粋なものにしています。事実、身体的にも健康的で魅力的です。まったく、平和に寄与することをセールスポイントにするなんてなんという発想だ」。

オリンピックブランドの力をよりよく理解し、活用することこそが、過去20年間の成功しているオリンピックのマーケティングプログラムの肝となっていました。1996年のアトランタ・オリンピックの過度の商業化や様々な問題を受け、IOCは、マーケティングプログラムをより厳重に監視、管理するようになり、そして、オリンピックブランドの価値確立のために、直接、積極的な役割を担うようになりました。

過去百年間、オリンピックブランドは、それほど正式な管理組織を持たずに成長してきました。そこで、私は、1990年代半ば、IOCの放送局やマーケティングパートナーがオリンピックブランドの持つ本当の意味を考察できるプログラムを立ち上げました。パートナーたちは、何がオリンピックをそれほどユニークで特別なものにしているのかについて理解する必要がありました。また、彼らには、地元の政治家や組織委員会の気まぐれに左右されない明確で長期的なビジョンや安定性も必要でした。

現在「ブランディング」と呼ばれているものは、実は、オリンピックムーブメントの立ち上げ時からオリンピックの要でした。IOCの創設者であるクーベルタン氏は、オリンピック大会の標語として「より速く・より高く・より強く」という特徴のあるブランドビジョンを採用しました。常に、オリンピックは、象徴化や力強いイメージ、典礼に基づいて開催され、過去百年間、これらは、ブランドの資産価値を構築するカギとなっていました。初期の段階から、クーベルタン氏は「オリンピックは、典礼なしでは単なる規模の大きい複数のスポーツ競技の世界選手権にすぎないだろう」と語っていました。彼は、1914年、IOC総会を象徴するオリンピックの旗とエンブレムを発表しました。今や世界のだれもが知っているエンブレムの1つをデザインしたのです。

オリンピックにブランド以上の何かを見出す人たちもいました。実際、オリンピックには3千年の歴史があり、国際化が人々の話題になるずっと前から国際的な運動をしてきたのです。さらに、企業が自社のオリンピックイメージをどのように管理、成長させてきたのか、企業の世界から学ぶことはたくさんあります。

ブランドと商業的価値の矛盾

まず、オリンピックのシンボルが本当に意味しているものは何か、を理解しましょう。世界中で行われた市場調査はどれも、オリンピックブランドは2つの特徴ある分野にまたがっており、他のブランドとは違うという結果でした。厳密にいうと、赤十字のように人道主義的ではないし、ディズニーや他の娯楽、スポーツブランドのように商業的でもありません。オリンピックの各スポーツ協会は、他の民間のスポーツ組織より、より大きなダイナミズム、現代性を与え、オリンピックのスピリットと伝統は、他の商業的なブランド以上の高潔さをオリンピックブランドに与えています。

市場調査では、オリンピックブランドを下記の4つに定義しています。

1 願い
オリンピックは、その模範として、知恵として、すべての人に差別のないスポーツ競技を活用して、よりよい世界への希求を提供しています。

2 夢とインスピレーション
オリンピックは、選手たちの努力 …

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