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ロングセラーブランドのコミュニケーション戦略

「魔法の粉」を起点とした商品開発とキャンペーン

亀田製菓「ハッピーターン」

ハッピーターンは、甘さとしょっぱさを絶妙のバランスで配合した「ハッピーパウダー」の味が後を引く、軽い食感のせんべいだ。

発売は1976年。当時せんべいといえば、草加せんべいに代表される醤油味の堅焼きせんべいが主流で、コアユーザーの年齢層は高かった。ハッピーターンは、せんべいにあまり馴染みのない若いユーザーを取り込み、せんべい市場を拡大する目的で開発された。

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一般的にせんべいは網で焼いて作られる。だがハッピーターンは、サクサクした軽い食感を出すため、ビスケットのように鉄板で焼いた。味付けは、当時のせんべいの主流だった和風の醤油味に対して、若い層が好む洋風の甘くてしょっぱい味。醤油味のせんべいのようにタレをつけて焼くのではなく、焼き上げたせんべいにハッピーパウダーをまぶすという、新しい製法が採用された。

開発当時、日本は第一次オイルショックの影響で物価が上昇し、景気は低迷状態。亀田製菓の売上も伸び悩んでいた。新しく開発したお菓子を食べることで、閉塞感から解放され、少しの間でも幸せな気分を味わってもらいたいと考え、商品のネーミングも「お客さまの幸福感(ハッピー)が戻ってくる(ターン)ように」という願いを込め「ハッピーターン」となった。

市場拡大の切り札として開発されたハッピーターンだったが、発売から3年間は思うように売上は伸びなかったという。しかし79年ごろから、まず、甘口の醤油や味噌を好む西日本でハッピーターンの味が受け入れられ、そこから口コミで全国へと広がっていった。主な購買層は30代後半から40代の子育て世代で、おやつとして子どもと一緒に食べられており、年齢層の低いユーザーの開拓に成功。76年の発売から今日まで、ユーザーから支持され続けている。今や年間100億円に迫る売り上げを誇るロングセラー商品へと成長した。

2012年10月亀田製菓は、「ハッピーターンひろがるしあわせプロジェクト」と題したキャンペーンを大々的にスタートさせた。ここ数年、長引く不況や、リーマンショック、東日本大震災と、暗いニュースが続き、まさにハッピーターン開発当時と状況が重なる。そこで、ハッピーターンで再び世の中に幸福感を広め、亀田製菓自体も再活性化しようと考え、キャンペーンを実施することになった。30年ぶりのテレビCM出稿、初めての定番フレーバーの発売、コンセプトショップオープンなど、新しい価値創出への挑戦も始めている。

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