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書籍「SHARED VISION」発刊記念

SNSで顧客とより深くつながる「SHARED VISION」という視点

廣田周作(電通)×永岡弘恵(テレビ新広島)

脱「とりあえずアプリ」! 想いや理念を確認しよう

永岡▶廣田さんには、当社のブランドである「釣り」番組の長期的な広報がしたくて、施策のひとつとしてアプリが作れないかと相談しました。

廣田▶最初はそういうご相談を頂いたんですよね。しかしその要望に、僕は失礼ながら少し疑問を持ってしまったんです。というのも、番組の視聴者が集うコミュニティが顕在化していない中で、唐突にアプリをリリースしても、ユーザーが喜んでダウンロードし、盛り上がっているイメージが全くわかなかったからです。アプリありきで考えられているのではないかなと。

永岡▶私自身、SNSやアプリを全く知らないアナログ人間だったので、確かになぜアプリなのか、アプリで何を実現したいのかを、当時は明確に考えていなかったと思います。

廣田▶ならば、まず視聴者が集う場所を作ってその人たちのことを知る、つまり視聴者の「顔」を知ることから始めませんか、とご提案させていただいたんですね。アプリという手段からではなく、どう視聴者に喜んでもらいたいのか、目的を考えましょうと。また、それと同時に、作り手の方たちがどんな想いで番組を作られているのか、現場の方を中心にじっくりヒアリングさせてもらいました。そこで局や番組のミッション、スタッフの想いを聞いた結果、まずフェイスブックを使って局のファンとコミュニケーションをしていくという提案になりました。フェイスブックを使えば、局の人たちの等身大の「想い」が視聴者に伝わり、それを中心としたコミュニティができると考えたからです。

永岡▶その提案を聞いて、すぐに「やってみたい!」と思いました。それは「流行りのフェイスブックだから」ではなく、一過性の広報・宣伝活動では、プロデューサーやディレクターの熱い想いを伝えきれないと、常々もどかしく感じていたからです。結局、TSSの公式ページに加え『釣りごろつられごろ』と『ひろしま満点ママ!!』の2番組で、フェイスブックページを開設することになりました。

決め事は「ちょっとでも、フェイスブックに疲れたらやめる」「KPIは(視聴率ではなく)"笑顔"」とし、会議もお茶を飲みながらの和気藹々とした雰囲気で進む。

廣田▶次に、あらゆる部署の方を集めて運用に関する勉強会を開きました。使い方を伝えるだけでなく、組織の壁を超え横の連携を強め、スタッフからアイデアが生まれやすい雰囲気を作ることが必要だと感じたからです。

番組作りで最も大切なのは、目先の視聴率を気にして戦略をコロコロ変えることではなく、現場の人たちが持続的にクリエイティブなアイデアを生みやすい「環境」を整えることだと考えました。些細なアイデアも気軽に言えるオープンで楽しい雰囲気を長期的に作る。それが現場のモチベーションアップのための近道だと。だから、SNSを運用する上で僕からのお願いは「皆さんが、ちょっとでも運用に疲れたらやめましょう」「KPIは(視聴率ではなく)運営メンバーの"笑顔"にしましょう」の2つだけにしました。

よく「フェイスブックをやれば、すぐに効果が出ますか?」と聞かれますが、それは結局、社内に良い環境を作れるかだと思います。フェイスブックは「漢方薬」のようなもの。局や番組の「人格」が伝わり、視聴者に「想いが共有される」までには時間がかかります。僕は、当初「3年間は視聴率のことを言わないでください」とお願いしました。思い切った言い方でしたが、しかし、3年後には必ず結果が「持続 的に」出せるようになっています、と。

出演者と視聴者のバスツアー リアルタイムに旅行を実況

『ひろしま満点ママ!!』の出演者とスタッフが企画、実施した番組MCの古沢知子アナと行く「スペシャルバスツアー」は、「地域やファンとつながろう」というフェイスブックページでの考え方が、番組を越えて実現した例だ。

廣田▶勉強会をきっかけに始まったプロジェクトはありますか?

永岡▶『SHARED VISION』の中にも出てくる、『ひろしま満点ママ!!』のサンフレッチェ広島とのコラボ企画 (出演者らがサンフレッチェ広島の優勝を祈念してマラソンを行い、その模様を地元の学生と協働でUSTREAM配信)やバスツアー企画があり、それらは非常に盛り上がりました。2月に実施した番組MCの古沢知子アナと行く「スペシャルバスツアー」は、視聴者が、出演者やスタッフと一緒にバスツアーに行く企画で、旅行の状況を、後日、番組内で伝えただけでなく、リアルタイムにフェイスブックに投稿。タイムスケジュールや添乗員も出演者やスタッフが担当し、手づくり感あふれる企画になりました。この企画が生まれたのも、フェイスブックがあったからですね。

今や『ひろしま満点ママ!!』のフェイスブックページには、番組で取り上げたお店の方がお礼を書き込んだり、視聴者の方が感想を投稿してくださったりするようになりました。スタッフもファンの顔が見えるフェイスブックを楽しんで運営しています。

廣田▶「作り手」と「視聴者」の垣根を越えて「広島を愛する人たち」として、一緒に楽しい体験をしているんですね。これこそ「皆で創りたいこと」「皆で創る理想の姿」を意味する「SHARED VISION」の理想の姿だと思います。もはや番組もフェイスブックも「局のもの」を超えて「視聴者のもの」になっていますね。

永岡▶ありがたいことに、フェイスブックページを開設した昨年度は、2000年の放送開始以来、過去最高の月間視聴率を記録しました。さらに 「広島のママを幸せにしたい」というフェイスブックのコミュニティの目的に賛同し、スポンサーからコラボ企画の提案もありました。放送からリアルの体験までセットでプロデュースできる番組に変わったと思います。

"What to say"発想から受け手視点にチェンジ

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廣田▶今後の課題はありますか。

永岡▶フェイスブックに対するマインドの中長期的な継承です。

廣田▶運用担当者の個性や想いが、コミュニティの雰囲気に大きく反映されますから、どうしても属人的になってしまうことはありますね。運用の継承はたしかに課題だと思います。僕が感じる課題は、企業の中に社内外のコミュニケーション全体を見渡す人が足りていないという点です。テレビ新広島のように、部署を越えて連携する人たちが数多く現れるのが理想です。

永岡▶「SHARED VISION」を実現するためには何が必要ですか?

廣田▶送り手視点から受け手視点に180度変えることだと思います。企業や広告会社は"What to say"(何を言うか)にフォーカスしがちですが、「受け手はどう思うか?」から考える発想が重要です。また、運用担当者は「喜びをシェアしたい」という根本的な欲求に素直になるべきです。素直であること、率直であることって大事だと思います。このような人間的なことこそが、実はデジタルの世界では最も大切なことだと思います。(文中敬称略)

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