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社内コミュニケーション 従業員が参画したくなる伝え方

広報の進化が組織にイノベーションをもたらす

矢野健一(D&Fクリエイツ)

「いいモノを速く大量につくる」だけでは立ち行かない中、ヒト、つまり従業員の変革が経営の鍵を握る時代となっている。その中で、広報パーソンはどのような役割を担うべきか。「従業員の誇り・やりがい」を引き上げる、これからの広報を考える。

人への投資や人的資本という言葉を目にすることが最近は増えてきました。経営資源であるヒト、モノ、カネのうち、現在、経営の話題の中心にあるのは間違いなく「ヒト」でしょう。

この流れは、日本が変革期を迎えていることと無関係ではありません。欧米の経営者の中には十数年単位でどんどん新しいことを生み出していこうという発想の方が多くいます。彼らにとっての「企業の持続的成長」とはイノベーションの連鎖によって常に企業を進化させることです。

ところが、これは主観的な部分もあると思いますが、従来、日本の経営者はどちらかというと、つくり上げたものをできるだけ長く存続させようという「守りの経営」の発想が多かったように感じています。

しかし、バブルが崩壊し、インターネットが普及、グローバル化が進み、市場の基盤そのものが変化してきた中で、ついに日本式の「守りの経営」が行き詰まりました。この状況下で継続的成長を実現させていくには、日本企業も同じようにイノベーションを連鎖させていかなければならないのです。

さらに現代は、競合よりもいいモノをつくり、効率的に儲ける仕組みを持っているだけでは企業の存続が難しい時代です。なぜなら、競合も含めて全員が市場で成長していない時代だからです。

だからこそ、いま最も威力を発揮する経営資源はモノでもカネでもなく、それらを生み出すヒトなのです。

いよいよ最後の経営資源であるヒトが戦略上の大きなカギを握る「ピープル・ファーストの時代」になってきました。

「三方良し」のイノベーション

では、我々はどうしたらヒトに変革をもたらし、イノベーションの連鎖を生み出すことができるのでしょうか?それには従業員が喜ぶ施策を実行することはもちろん、同時に顧客が喜び、企業が喜ぶ、まさに三方良しのイノベーションが有効となります。

その三方をつなぐのが今の時代のバズワードにもなっている「パーパス」「ビジョン」「バリュー」です。

パーパスやバリューとは、もちろん企業にとって重要なものなのですが、これを従業員にも喜ばれるものにするにはどうしたらいいか、そして顧客にとっても喜ばれるものにするにはどうしらたいいかを考えて実行していくのです。これがパーパスやバリューを「社内外に浸透させていく」という真の意味です。

これを実現するひとつの方法論として、企業や商品と合わせて、従業員もブランディングすることで新しい顧客体験を生み出す「三位一体ブランディング」の手法を、拙著『ピープル・ファースト戦略』の中で提唱しました。

その手法とは、従業員体験(Employee Experience:EX)を、顧客体験...

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