オンライン取材が浸透し、オウンドメディアでの発信も活発な昨今。だが、広報活動の成否を分けるのは、記者と日常的に会話を交わせるような関係性を築けているかどうかだと、筆者は指摘する。コロナ後に広報に着任し、対面コミュニケーションが難しかった担当者は、今後どのように記者へアプローチしていけばよいのだろうか。
新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ5類に変更された。「第9波」の到来を警戒する声もあるが、3年にわたり続いてきたコロナ禍に一区切りついたことは間違いない。ただ、非常事態モードが長く続いたため、メディア対応をどう通常モードに戻せばいいのか迷っている広報もいるだろう。そもそも「コロナ前」を知らない担当者が増えているはずだ。今回は、これから広報が取り組まなければならない課題について考えてみたい。
危機対応で真価が問われる
この点で最も重要なのは、記者との関係の再構築だ。この3年間でメディアと広報の距離はかなり広がってしまった。記者やベテラン広報は、その溝を埋めようと動き出している。例えば筆者の周辺では4月の連休前から、5類移行を待たずに記者と取材先の飲み会が急増した。確かにコロナ流行下でもオンラインコミュニケーションで代替できた部分は意外に多かった。しかし、それがスタンダードになったと考えていると他社に後れをとることになるだろう。
もともと記者は、一般のビジネスパーソンとは比べものにならないほど対面コミュニケーションを重視する。この点は、とくに若い世代には理解し難いかもしれない。「せっかく効率的なオンライン取材が広がったのに、元に戻すなんて馬鹿げている」と感じる人も多いだろう。
だが、機微に触れる取材では相手と日頃から「あうんの呼吸」で付き合っているかどうかがものをいう。お互いに軽々しく口にできない秘密について情報交換することになるからだ。この点は、コロナ禍を経ても本質的には変わっていない。オンラインでそうした記者対応ができていたのは、大半がコロナ前に信頼関係を築けていた広報だけだ。
もちろん、商品のプレスリリースに関する問い合わせに応じるなど、平時の対応だけならそこまで深い関係は必要ない。しかし、広報が真価を問われるのは危機対応だ。
例えば自社が不祥事を起こして取材が殺到したとしよう。記者はスクープをものにするチャンスと、他社にスクープを抜かれるリスクを前に頭に血がのぼっている。そうした状況になると記者の本性がむき出しになる。普段から相手の性格を把握し信頼関係を築いていないと、ちょっとした言葉のアヤから不必要な非難にさらされたり、正当な釈明に耳を傾けてもらえなかったりするリスクが高まるのだ。
日常的に会話できる関係を築く
では、コロナ後に着任し、記者とそうした関係がない広報はどうすればいいのか。まずは理由を見つけて会う機会を増やすことだ。手っ取り早いのは...