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疫病と広報史

性感染症予防キャンペーンの効果測定

国枝智樹(上智大学)

私たちに大きな影響を与えている「疫病」。海外の疫病にまつわる歴史的な出来事から、現代に通じる「広報」の意義や役割について紐解きます。

効果測定は広報戦略において重要な位置を占めます。評価をする上でも、次の戦略を練る上でも不可欠です。そんな広報の効果測定が100年前、アメリカで性感染症予防キャンペーンの一環として行われていました。(

*Anderson, W.(2020). A cultural-economic examination of public relations measurement in the 1920s and its implications for contemporary practice. Corporate Communications:An International Journal, 25(4), 669-685.

啓蒙活動に立ちはだかる壁

性感染症は100年前にはすでに深刻な問題として認識されていました。国内での流行に加え、第一次世界大戦でヨーロッパに派遣された多くの米兵が感染。任務の遂行が困難になったことが問題視されました。性感染症は当時、感染経路と予防法は知られていましたが、性を巡る問題だったために公然と語ることに対する抵抗も強く、啓蒙活動には困難が伴いました。

例えば1910年代から米公衆衛生局や米社会衛生協会はパンフレットや広報誌、映画を制作したり、講習会を開催したりするなど、積極的に啓蒙活動を展開していました。それらは最新の科学的知見に加え、男性や女性、夫婦のあるべき姿を巡る倫理観や愛国心に訴える内容を含み、男性と女性、若者と親、白人と黒人、市民と軍人など...

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