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疫病と広報史

スペイン風邪と鉄道マナーポスター

国枝智樹(上智大学)

私たちに大きな影響を与えている「疫病」。海外の疫病にまつわる歴史的な出来事から、現代に通じる「広報」の意義や役割について紐解きます。

1918年9月27日、ニューヨークの地下鉄に一枚の壁新聞が掲示されました。

「スペイン風邪の蔓延を防ぐため、くしゃみや咳をしたり、(我慢できず)痰を出したりする際は、ハンカチで口を覆ってください。みなさんの協力が得られれば、感染の危険はありません。」

壁新聞の名前は『サブウェイ・サン』、発行主は地下鉄を経営するインターボロー・ラピッド・トランジット(IRT)社、製作者は「PRの父」の一人、アイビー・リーでした。

乗客との信頼関係の構築

1918年から1919年にかけて世界で蔓延したスペイン風邪は、人が密集したり、咳をしたりすることによって広まることが知られていました。混雑が問題になっていた地下鉄でも、安全対策が必要とされていました。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、公共交通機関を利用する際は必ず感染予防を促すメッセージを見聞きするようになりましたが、100年前も同様のメッセージが発信されていたのです。

ただ、『サブウェイ・サン』発行の主な目的は、従業員ストライキや設備投資の遅れで失われた乗客の信頼の回復や、当時ニューヨーク市が規制していた運賃の値上げを実現するための、乗客の支持獲得でした。壁新聞の形をした広報紙で、英字新聞の一面トップに似たレイアウトや見出しを用いて、時には挿絵も載せることによって、乗客に読んでもらえるような工夫を凝らしていました...

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