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疫病と広報史

ポリオ撲滅運動と若者向け広報──プレスリーの予防接種が患者減に貢献

国枝智樹(上智大学)

私たちに大きな影響を与えている「疫病」。海外の疫病にまつわる歴史的な出来事から、現代に通じる「広報」の意義や役割について紐解きます。

キング・オブ・ロックことエルヴィス・プレスリーが米放送局CBSのスタジオでポリオの予防接種を受けたのは1956年10月28日。人気バラエティ番組エド・サリヴァン・ショーに出演する直前の、当時21歳だったプレスリーがテレビカメラや記者たちの前で注射を受ける様子は広く報じられました。それはニューヨーク市保健局による若者のポリオワクチン接種率向上のためのパブリシティ企画でした。

ポリオはウイルス性の感染症。多くの人は無症状か風邪のような軽症に留まりますが、重症の場合は手足などが麻痺し一生障害を抱えるだけでなく、死に至ることもある深刻な感染症です。幸い、国際的な撲滅運動によって現在ポリオはほぼ根絶されています。アメリカはプレスリーが予防接種を受けてから4年以内に患者数を90%減らすことに成功。ポリオ撲滅運動における広報の歴史は、ターゲティングの重要性を教訓として残しています。

アメリカでポリオ撲滅運動が本格化したきっかけは、自身もポリオを発症し車椅子生活を余儀なくされたフランクリン・D・ルーズベルト大統領が1938年に全米小児麻痺財団を設置したこと。同財団がポリオ患者の治療やワクチン開発に必要な資金を捻出するために行った活動はマーチ・オブ・ダイムズとして知られ、現在は財団名にもなっています。

運動を命名したのは...

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