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従業員エンゲージメント・テレワーク

いち早く在宅勤務を標準化した日立 「有言実行」が従業員の胸を打つ

日立製作所

コロナで多くの企業のトップが社員の安全を強調するも、「言うは易く行うは難し」。実行に移すのは至難の技だ。一方、日立製作所は世界に30万人の社員を抱えながらいち早く在宅勤務の標準化を宣言。その背景を探った。

新型コロナウイルスの影響で、4月16日から緊急事態宣言の対象範囲は全国に拡大。日立製作所は、その3週間も前に、都内約150の全事業所、社員約5万人を対象に在宅勤務を徹底する方針を発表(3月26日付)。さらに宣言解除の翌日5月26日には、在宅勤務を標準化する方針を明らかにした。

多くの企業経営者らが、社員の生命を重んじてはいるものの、業務内容によっては、テレワークは困難など、その導入は一筋縄ではいかなかった印象だ。一方で、日立製作所の社長兼CEOの東原敏昭氏は、社長メッセージで「何よりも、社員の健康が第一だ」と繰り返し社員に語りかけ、有言実行、在宅勤務の標準化をいち早く決めた。その一貫した企業姿勢と、そうした組織風土を根付かせるための社内コミュニケーション施策、そこから生まれる従業員エンゲージメントとは。

グループを意識した社内報へ

そもそも、日立製作所のインターナルコミュニケーションの取り組みは、1939年にまで遡る。「日立社報」だ。「そして、1999年にイントラネットに移行したのです」。同社 グループブランド戦略部 部長の紺野篤志氏はそう説明する。

イントラネットへの移行で意識されたのが、グループ全体への情報伝達だ。日立製作所はじめ約800社で構成される「日立グループ」。グループ内で海外子会社の割合が増え、それまでは比較的緩やかなつながりだったのが、グループとして連結経営へと大きく舵を切った。

「経営方針の変更に伴い、社内報も"グループ"を意識したコミュニケーションに。例えば、前述の紙の社報が主として日立製作所内にのみ配布されていたのが、イントラネットへ移行したことで、グループワイドに、また海外にも情報を発信できるようになったのです」。その他、社内報の目的も、単に情報を"送る"「上意下達型」から、「経営トップと社員の双方向コミュニケーション」を意識したものへと変わっていった(図1)。

図1 社内報の変化

メールで直送する形式へ

一方、ここのところ課題に挙がっていたのがグループを横断したイントラネットへのアクセス性だ。一部のグループ会社とは、イントラネット同士が接続していないことから、どうしても情報伝達の速度に差が生まれていたという。

そこで、プラスアルファの施策として、2020年4月からは、グループに関するホットな情報をA4で1~1枚半程度にまとめたPDFデータを全社員にメールで送ることにした。それが『Inside Hitachi』である。海外のグループ会社の社員も読めるよう、英語、中国語版も用意され、毎週水曜日に最新号が送られる。

本施策の背景について、紺野氏は、「リモートワークで社内業務のほとんどがメールでのやりとりになったことで、メールで送った方が確実に読んでもらえる、と踏んだのです。さらに、2019年度までもイントラネットの情報をまとめた『イントラメールマガジン』を月1回発行していましたが、リモートワーク環境下では、短いながらもより高頻度で送った方が良いのでは、と考えました」と説明する。結果、各所から「読んでいる」などの声が届くようになり、リーチ率が上がった、と手応えを示す。

社長とのやり取りの場を創出

「経営トップと社員の双方向コミュニケーション」を体現するかのように、社長メッセージでは、社長と社員間の"インタラクティブな"コミュニケーションの場も創出した。というのも、社長メッセージに対し、社員からコメントが寄せられると、そのコメントを踏まえて、社長が自身の想いを語るなど、会話のキャッチボールが続くのである。

「(緊急事態宣言発出直後などの)社長のメッセージは、社員とその家族の安全、健康が第一であることを伝えたい、という想いが強く伝わってくる内容でした。そのため、社員からの反応も、『コロナが心配だ』などの声が多数を占めていましたが、徐々に社長のメッセージもコロナを克服し、新しい価値を生む、など前向きな内容のものが増えていきました。それに伴い、社員からも『在宅になって不便だが、新しい働き方があるかもしれない』などの前向きなコメントが寄せられるようになってきました」。

実際にそのことが見て取れる社長のメッセージがある。「皆さんから毎日のようにコメントを頂戴しています。共通していることは、この困難な局面にあっても、社員の皆さんが前を向いていることです。例えば『今まで感じなかった事をいろいろ感じて創意工夫しながら業務をこなす。それはきっと将来に結び付く』(4月10日受領)とか〈中略〉未来のために自らがなにをするべきかを模索する、まさに『開拓者精神』を強く感じ、本当に心強く思います」(5月25日付『社長メッセージ』)。

また、『Inside Hitachi』発刊に伴い新設したコーナーも。それが、グループ社員からのメッセージを載せる「Employee Messages from Around the World」だ。趣旨は、コロナで世界各地の困難な環境下で業務を行っている社員らのメッセージを届ける、というもの。4月以降にメッセージの募集を開始したところ、すでに120件以上の声が寄せられているという。

今後さらに、在宅勤務が浸透する中では従業員参加型の社内コミュニケーションが求められるようになるだろう。

『Inside Hitachi』の初号。コロナに対する自社の対応状況やイベント開催の告知情報などが掲載されている。下はグループ社員からのメッセージを掲載した「Employee Messages from Around the World」。

CHECK!

● PDFに短く社内報をメールで送信。リモートワークでも読まれるように

● 社長メッセージを読んだ社員がコメント、さらに社長が…と会話のキャッチボールができる場を創出

● 前向きな内容のトップメッセージで、社員からは在宅での働き方にも前向きなコメントが増えた

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