鉄道の廃止や自然災害など、度重なる危機により過疎化した北海道下川町。2001年から持続可能な森林経営システムを基軸としたまちづくりを進めた結果、2010年以降は、IターンやUターンの増加によって、転入超過になる年も出てきた。
2017年に「ジャパンSDGsアワード」(外務省)の最高賞を受賞した北海道下川町。深刻な人口減少や高齢化などの課題を克服するために、約20年間続けてきた持続可能なまちづくりによって今、成果に結びつきつつある。
森林を将来につなぐ
札幌市から北東に240キロ、真冬はマイナス30度以下にもなる下川町は、東京23区とほぼ同じ644平方キロメートルの面積を有し、その約9割を森林が占める。1901年の開拓以降、農業・林業・鉱業などで発展していった。現在の人口は約3200人だが、1960年代のピーク時には1万5000人を超えていた。
その後、日本の産業構造の変化などで基幹産業は衰退。銅鉱山の閉山、営林署(現在の森林管理署)の統廃合、鉄道の廃止などの危機が相次いだ。1980年の国勢調査では人口減少率が北海道内で1位、全国4位を記録している。この急激な過疎化により地域の活力は低下した。
ただ、町の重要な資源である"森林"に関しては、以前から次世代に残していくための取り組みを進めていた。まず、1953年に1200ヘクタールを超える国有林の払い下げを受け、町独自の資源を確保。しかし、不運にも翌年の洞爺丸台風により、町有林は壊滅的な被害を受けた。
その影響もあり、1956年には農協が財政再建団体へ転じることに。それでも、町の重要な資源である森林を将来へつないでいこうと、1960年から60年間かけて、40~50ヘクタールの森林を育てるための伐採・植林・育林のサイクルをつくり始めた。これが、循環型森林経営の始まりであり、現在もこの理念に基づいて森林管理がなされている …