公害問題を乗り越えた経験を踏まえ、環境に配慮した街をつくってきた北九州市。SDGsクラブとSDGs協議会を両輪に産官学民連携を促進し、環境未来都市を深化させることで、SDGs未来都市へと変貌を遂げている。
1963年に5市の対等合併により、九州初の政令指定都市として誕生した北九州市。この街の発展と環境問題は切っても切れない関係にある。近年のSDGs先進都市づくりに向けた取り組みも、古くから積み重ねてきたまちづくりの延長にあるのだ。
公害問題を対話で解決
発展の歴史は明治時代にさかのぼる。1901年に官営の八幡製鉄所が操業を開始したことを機にモノづくり産業が集積し、「モノづくりの街」として日本の高度経済成長をけん引した。ところが、1960年代になり大気汚染や水質汚濁などの深刻な公害問題が浮き彫りに。「七色の煙・北九州」「死の海・洞海湾」と揶揄されるまでとなった。
そこで市民による「婦人会」が立ち上がり、大学教授らとともに行政や企業に対して「青空がほしい」運動を実施。それを受け、産官学民の連携で様々な対策を講じ1980年代には公害を克服した。この時に培った「市民力」が、現在もまちづくりの軸となっている。
北九州市企画調整局SDGs推進室次長の上田ゆかり氏は「公害問題を訴訟に発展させることなく、対話で解決させることができたことは、我々のサクセスストーリーです」と語る。この成功モデルはのちに、アジア諸国に対する環境国際協力として横展開した。
公害克服後は、循環型社会や低炭素社会づくりに尽力してきた。内閣府から2008年に「環境モデル都市」、2011年には「環境未来都市」に選定されるなど、外部からの評価も受けている。
2015年に国連でSDGsが策定された後は、市民力を再構築しこれまでの取り組みを深めることでSDGs先進都市をつくろうと尽力してきた。その狙いは「都市ブランドの向上」や、環境国際ビジネスを通じた「北九州モデルの世界発信」だ。
結果、2017年に外務省の「ジャパンSDGsアワード」で特別賞を受賞。2018年にはアジア地域で初めて、経済協力開発機構(OECD)の「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」に選定された。同年、内閣府の「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれている。
産官学民連携でモデル構築
2018年8月には、SDG未来都市への選定を受けてSDGs未来都市計画を発表(図1)。ビジョンとして「『真の豊かさ』にあふれ、世界に貢献し、信頼される『グリーン成長都市』」を掲げ、SDGsで重要とされている3側面"経済・社会・環境"に統合的に取り組み、自律的好循環を生むことを目指している。その取り組みのひとつとして、自治体SDGsモデル事業に選ばれた「地域エネルギー次世代モデル事業」がある …