「バズる」PRは死んだ マーケティングPRは本質化へ
「戦略PR」の提唱から約10年。未来のマーケティングPRはどこへ向かうのか。「ブームをつくる」「時代に名前をつける」というPRの役割の変化について、最前線を見てきた嶋浩一郎氏、新世代を牽引する三浦崇宏氏が語り尽くす。
「効く」プロダクトPR
かつてはゴールデンタイムで放送されていた新日本プロレスリング。2005年にどん底を経験したが2018年には過去最高益を記録するまで復活した。躍進を支えた広報戦略を、同年6月に社長に就任したH.G.メイ氏に聞く。
新日本プロレスリング 代表取締役社長 兼 CEO H.G. メイ氏
当社は1972年の創業以来、夜8時からのテレビ番組で放送されたことなどから人気を博してきました。ところが、昭和の終わりごろにはゴールデンタイムから姿を消し、2005年には過去最高赤字を記録してしまいました。2000年代は「暗黒時代」と呼ばれているほどです(図1)。
ブシロードの傘下に入ってからは、マーケティングを強化し、宣伝やPR施策を戦略的に行ってきました。その成果もあり、2018年には過去最高益を更新しました。ブシロードは、2019年7月に東証マザーズに上場することもできました。
アメリカのビジネス書籍は年間1万~1万5000冊出版されていますが、最も多く扱われているテーマは①リーダーシップ ②経営戦略 ③マーケティングの3つです。アメリカでは日本以上にマーケティングが重要視されているのです。
このマーケティングに基づいて設計するコミュニケーションがPRですから、企業経営においてPRは非常に重要です。
アメリカでは、ひと昔前まではプロダクトマーケティングが主流でした。その商品がいかに優れているのかをPRする方法です(図2)。しかし1990年代に入るとコモディティ化が進み、商品の差別化が難しくなってきました …