マネーフォワードが2016年に開設した「MONEY PLUS」はコンバージョンを意識せず、広告収入を得る純粋なニュースメディア。経済誌記者出身の編集長に、その制作体制や狙いを明かしてもらった。
お金の見える化サービス「マネーフォワード ME」などを手がけるマネーフォワードのオウンドメディア「MONEY PLUS」。2016年10月に前身の「マネトク!」からリニューアルし、広く一般に認知されるメディアへと成長した。
社長室広報部の稲増祐希氏によると、リニューアルのポイントは純粋な"ニュースメディア"への移行。『週刊東洋経済』の記者として不動産や金融業界などを担当していた猪澤顕明氏(Money Forward Home PFM本部 メディア編集部 部長)を編集長に迎え、ジャーナリズム性を高めたのだ。
お金に対する意識を変える
マネーフォワードがオウンドメディアに求めるのは"プラットフォーム"としての機能。編集権限を独立させているため、コンバージョンは追求せずに、潜在顧客の認知や興味・関心を得るのが目的だ。つまり、「多くの人に"お金"に興味を持ってもらうための情報のプラットフォーム」である。
「日本人は"お金"に関する話題となると後ろめたさを感じてしまう。ここに我々の課題があった」と稲増氏。同社が顧客を拡大していくためには、日本人のお金に対する意識を変えていく必要があった。「メディアも同じで、お金に関する記事は不用意に不安をあおるようなものが多い。だからこそ、我々はお金に関して前向きに考えることができる情報を発信していきたいです」。
編集方針に掲げるのは「日々のくらし、人生を豊かにする『くらしの経済メディア』」。これまであいまいになっていたターゲットを「一般生活者」に定め、コンテンツの幅も広げた。リニューアル前は、投資・保険・クレジットカードなど、事業と関連性の高いニュースのみを発信していたが、現在は結婚・妊娠・出産・子育て・住まい・趣味・キャリアなど、日常生活やライフイベントと関連する話題も扱っている。「現在扱うのはお金にまつわるすべての話題。様々な人のライフステージに寄り添うような記事を発信している」と猪澤氏。
オウンドメディアと純粋なメディアがボーダレス化している今、目標は「お金のメディアでテッペンを獲ること」だ。目指すメディア像としては、経済金融メディアの「ZUU online」などを挙げる。今後は、ほかの金融に関連するメディアとの連携なども視野に入れているという。
より多くの一般生活者に訴求するため、Yahoo! ニュースやSmartNewsなど外部のプラットフォーマーとも連携し、記事の拡散に力を入れている。これらを経由した流入は非常に多く、例えばMONEY PLUS編集部で執筆したレナウンの記事「料金は売値の半額、『スーツ月額利用サービス』の衝撃」(2018年9月11日)は、Yahoo! ニュースのトップで取り上げられた後、レナウン側のサーバーがダウンしてしまうほど反響があった。
ただ、外部のプラットフォームはすぐに他のニュースに切り替わってしまい、あまりPVが伸びないという弱点も。「背後にある事実の分析などを盛り込むことで、瞬間的にバズる記事ではなく、しばらくしてから読んでも発見のある記事を目指している」と猪澤氏 …