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セブン-イレブンが「樽生ビール」を販売直前に中止 他のコンビニにも余波が

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

コンビニで「樽生ビール」に賛否両論
生ビールの店頭販売を予定していたセブン-イレブンが発売直前に中止を発表した。きっかけは店頭に設置したビールサーバーの写真がSNSで拡散したことだった。

セブン-イレブンは7月17日から、首都圏の一部店舗で樽生ビールの試験販売を開始予定だった。その数日前、対象店にはビールサーバーが設置され、発売日を知らせる紙が貼られていた。利用客がその写真をTwitterに投稿すると一気に拡散され、店舗や本部に問い合わせが殺到したという。

まず注目されたのは価格だった。Sサイズが税込100円で、つまみを買っても居酒屋より安いと期待の声が広がった。一方で、飲食関係者などからは影響を懸念する声が上がり、同時に飲酒運転やコンビニ周辺での酔っ払い問題などを不安視する声も聞こえた。予想以上の反響を受けセブン-イレブンは、「注目が集まりすぎて販売体制が整えられない」ことなどを理由として、発売直前に販売中止を発表した。

Twitter投稿がニュースに

広報的な視点で見ると、今回の教訓は大きく2つある。ひとつは、ニュースの起点だ。

この「試験販売」がニュースになったきっかけは、セブン-イレブンの発表ではなかった。利用者が店舗で撮ったビールサーバーの写真である。Twitterに投稿されたその写真が、ニュースとして広がったのだ。

広報の実務では、組織がメディア向けに発表をすることで報道が生まれると考えがちだ。しかしこのケースでは、利用者がマスメディアではなく店舗でニュースを見つけ、マスメディアが報じるよりも前に、多くの人がSNSでニュースを知ったということになる。

店舗でも、ビールサーバーを設置し、ビールグラスの写真を背景に「7月17日より生ビールはじめます」と書いた紙を貼り付けていただけで、まさかこれほどの騒動になるとは思っていなかっただろう。多くの企業広報が警戒する「ネット炎上」という形でもなかった。だが結果として、準備した試験販売を開始できない事態に発展した。

思わぬ形で注目が集まったときにどう動くのか、考えておいて損はない。

報道後の余波に注意

もうひとつの教訓は、余波である。セブン-イレブンのニュースがメディアで報じられた直後から、コンビニ各社に問い合わせが来た。その流れで、以前から生ビールの販売をしていたJR東日本系のコンビニ「NewDays」に注目が集まった。ちょうど割引セールのタイミングとも一致したのだ。ネット上にはセブン-イレブンの騒動をきっかけにNewDaysの生ビール販売を知った人も少なくなかったようだ。

実は、広報の力が試されるのはまさにこんな場面だ。なぜNewDaysでは運用が可能なのか。ビールは品質管理が肝で、最大のアピールポイントである。サーバーの洗浄、スタッフの体制はどうなっているのかなど組織としての工夫を伝える大きなチャンスなのだ。一時的に注目が集まると短期的な売上は伸びるが、その背景の仕組みをしっかり伝えられれば、さらに長期的な信頼として生きてくる。ぜひそんな方向につなげられる広報でありたい。

社会情報大学院大学 客員教授・ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学客員教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ50万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net

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