社内コミュニケーションの難しさは、理念やビジョンの浸透プロセスにある。2社の先進企業の取り組み事例や成果から見えてきた共通項を挙げながら、従業員への理念浸透の流れを体系化した「SUPPモデル」について解説する。
働き方の改革は、ITの進化も相まって、働く人たちに様々な変化を求めている。社内外に対する広報・コミュニケーションに関するテーマにも多くの変化が見られ、インターナルコミュニケーションに対する期待も大きくなってきている。働き方に大きな変化が求められている時にこそ、揺るぎない行動の規範、判断の原点が重要となり、企業競争力を高めるためにも独自の理念やビジョンを浸透させ、実践につなげる工夫が必要とされている。
社内広報担当の役割も変わってきた。働き方の改革を求められている社員たちに意識の中核に据えるべき理念やビジョンを浸透させること、そして、その理念やビジョンに基づく成果をあげてもらうことが目的になってきている。
「対話」と「報奨」が有効
インターナルコミュニケーションを重視して、理念やビジョンの浸透を図ることで企業競争力を高めている先進事例には共通点がある。
本誌2017年8月号の拙稿で紹介した西武ホールディングスでは、社長による週末の現場巡回での対話を通じて多くの社員がグループビジョンに対する理解を深め、グループビジョンに基づいた優れた取り組みを表彰する「ほほえみ大賞」やグループビジョンを実現する施策を社員が立案する「ほほえみFactory」といった報奨の仕組みを通じて、グループビジョンの実践につなげる施策が推進されている。
また、オムロンでは企業理念を軸に展開する「企業理念経営」を標榜し、経営陣と社員との車座での対話などを通じて企業理念への理解を深め、「TOGA(The OMRON Global Awards)」という表彰イベントを通じた企業理念の実践を推進している。
このような、理念やビジョンの浸透を図るインターナルコミュニケーション施策が有効に機能している先進事例を精査すると、その浸透プロセス(図1)には共通点が見えてくる。
筆者作成
4つのステップで浸透させる
(1)共有(Share)のステップ
理念やビジョンを伝達する際、まずは社員がそれを「耳で聞く」という状態からスタートする。組織的には理念やビジョンを「共有」するというステップである。西武ホールディングスでは、後藤高志社長が社内外で事あるごとにグループビジョンについて言及し、このステップをスタートさせた …