人事施策や業務効率化が争点となりがちな、企業の「働き方改革」の問題。近ごろインターナルコミュニケーションの視点からの課題解決が盛んになりつつある。メーカーなどでの社内広報経験を持つ、沢渡あまねさんにその役割を聞いてみました。
今こそ広報担当の出番だ!
──沢渡さんは働き方の課題解決を専門とされています。広報のお仕事をされていた経験もあると聞きました。
はい。日産自動車で海外マーケティング部門の社内広報・ブランドマネジメントを担当していて、部門および海外の販売統括会社の事業計画達成を後押しするインターナルブランディングやワークスタイル変革に携わっていました。NTTデータでは、広報部のグローバルブランド戦略づくりのプロジェクトに参画した経験もあります。
私は「広報が、今の日本の問題解決の要になりつつある!」と確信しています。「働き方改革」の議論と相まって、今は「インターナルコミュニケーション」「社員のエンゲージメント向上」というテーマへの社会的関心が高くなっていると思います。これは企業や官公庁、東京・地方にかかわらず、です。
働き方改革をめぐる動きは、今まさに過渡期です。2016年秋ごろから盛んに業務効率化の議論が交わされてきましたが、本質的な働き方はなかなか変わっていないのが現状です。残業は減っても、仕事は減らない。成長機会を奪われて、モチベーションを下げる社員もいます。企業側としてもいい人材が集まらないジレンマもある。
今は景気も回復基調で、経営者の中には「受注は好調。経営は安泰」とおっしゃる方もいる。でも実際のところ現場は疲弊して、退職者が後を絶たないリアル。いよいよ、コミュニケーションの活性化やエンゲージメントの向上が焦点になってきます。
業務の無駄を省くにしても「当社はどの領域で、どんなビジネスモデルで勝っていくのか」「何をもって仕事の付加価値を高めていくのか」を議論しないと、何が無駄かなんて現場では判断できない。その企業の「らしさ」「目指す方向」「理念」は何か? を議論しないと目先の時短術や仕事術で終わってしまうのです。
そのきっかけをつくる。動機づけをする。それもインターナルコミュニケーションの役割です。社員に会社の近未来を伝える。新しいことに挑戦する部署や社員に光を当てる。その結果、「私もこういう挑戦をしてもいいんだ」と思ってもらう。私はこれを「社内のユーザー・エクスペリエンス(UX)」と呼んでいて、このUXの機会をつくることには大きな価値があります。
とはいえ社内コミュニケーションはなかなか自然発生しない。大きな組織ほど難しくなりますし、「残業削減」「無駄を減らせ」などと叫ばれる中ではなおのこと。誰かが、意図的に機会や場を設計して提供する必要があります。そこで、広報組織の出番です!
社内広報のマンネリ化を防ぐ
──編集部の調査では、広報会議読者の35%が「この1年で社内広報関連の予算が増えた」と回答しています。
いい傾向ですね。実際、社内コミュニケーションの重要性や業務のサイロ化の危険性に気づいた企業は早期に手を打っています。加えて、成功させるためのポイントは3つあります …