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近大マグロに続け! 全入時代の大学広報

動画、キャラクター、SNS⋯⋯大学広報のデジタル活用はどうあるべきか

東洋大学 × 追手門学院大学

デジタルを活用した広報が必要であることは言うまでもないが、具体的な戦術は大学の規模や知名度などによっても異なる。東洋大学、追手門(おうてもん)学院大学のデジタル戦略について聞いた。

(左)東洋大学 総務部広報課 課長 榊原康貴氏
(右)追手門学院大学 総務室広報課 課長 谷ノ内 識氏

1200科目の授業を公開

谷ノ内:学校法人追手門学院はこども園から大学・大学院までがあり、来年に創立130周年を迎えます。大学の歴史は50年ほどで、大阪府茨木市にキャンパスを置いています。文系学部のみの中規模大学です。

130周年記念事業の一環で新キャンパスの準備を進めています。立地は来年新設されるJR京都線(東海道本線)総持寺駅から徒歩約10分。10月に起工式を行い、2019年4月の開設を目指しています。同じ茨木市内にあり、現キャンパスから2キロ程度と近いので「2キャンパス1サイト」というキャッチフレーズを掲げ一体的に運用していく考えです。校舎も新しい大学を目指す象徴として斬新な形状なんです。

18歳人口が減少の一途をたどる中で、入試・教育・就職支援の改革を進めています。その結果が、2013年度入試からの5年連続志願者増ということで、『週刊ダイヤモンド』(2017年7月8日号)に紹介いただきました。経済誌などの大学特集で、中規模大学がクローズアップされることは多くはないですが、取り組み次第で成果は出るはず。それを広く社会に発信しようと情報発信に力を入れています。

11月には1200ほどある科目のリアルな授業を、一部を除いてすべて公開します。約7万人の卒業生や保護者が対象ですが、一般公開に近い形で大学の授業を見ていただきます。アンケートなどを通じてご指摘もいただきながら、改善に活かしていく考えです。ほぼすべての授業を公開するのは初の試みです。

榊原:東洋大学の学生で陸上選手の桐生祥秀君が、100メートルで日本人初の9秒台を達成したことは、最近の大きなニュースです。また、俳優やコメディアンとして活躍された植木等さん(故人)も卒業生ですが、その功績をたどる「植木等展」を10月に学内で行い、NHKの『ごごナマ』で生中継していただくなどメディアでも取り上げられました。

こうしたトピックスをどう出していくか。そのタイミングの見計らい方や、点と点をどう結び付けて線にしていくか、といったことは今年のテーマです。

谷ノ内:桐生君と植木等さんは結びつくのですか。

榊原:実は陸上競技部の先輩後輩、しかも同じ短距離。こうしたエピソードは少し掘り起こせば出てくるのですが、埋もれていることもたくさんあるはず。こうした情報を深掘りし、見やすく、取り出しやすくするような仕組みをどうつくっていくかも広報のテーマです。

谷ノ内:広報部門は経営機能のひとつと考えています。理事長をはじめとする執行部による、中規模大学の新しいあり方を目指そうという方針があり、その考え方を発信していく。『週刊ダイヤモンド』の場合は、それを記事にしてもらうことができました。中でも卒業生からの反響は大きかったですね。

異なるサイト刷新のスタンス

榊原:2016年11月にリニューアルした東洋大学のウェブサイトは、トップページの大きな検索窓が特徴です。キーワード検索を起点にするネットユーザーの行動に合わせれば、トップページはなるべくシンプルにしたい。目指したのはGoogleのインターフェイスでした。

コンテンツを英日併記にしていることも特徴です。これには言語対応のほかに、文字量を抑えたいとの意図がありました。約8割のアクセスがスマートフォン経由の今、長い文章はますます読まれにくくなっていますので。

谷ノ内:追手門学院大学のサイトは今年6月にリニューアルしました。すべてにCMS(コンテンツマネジメントシステム)を導入し、素早く更新できるようにしました。広報課の方針のひとつに、迅速かつ正しい情報発信を掲げていますので、その実現が課題でした。

東洋大学のような「検索型」は、近畿大学など知名度の高い大規模大学に増えています。ニュースの発信量が多く、それに興味を持ったユーザーが学部などの情報を見に行くイメージです。私たちはまだその段階ではありません。

まずは受験生とって分かりやすいサイトにすることが第一。そして新規のアクセスを増やすことが課題です。本学は第一希望の学生が比較的多いのが特徴です。偏差値などを見て、自分に合うのはこの大学と決めて来る。ただ、こちらはもっと幅広い層に興味を持って、サイトにアクセスしてもらいたいのです。

具体的には、サイト外でのメディアの露出を増やすことを重視しています。ウェブメディアへの掲載も意識しています。拡散すると、サイトに来てもらいやすくなるので。例えば時事問題に強い教員に関連したページをつくっておいて、それをニュースといかにリンクさせるかを考えたりもしています。

多様な授業こそ大学の財産

谷ノ内:東洋大学は知名度が高いので、もっとその中身を知ってもらうための施策を進めていますね。

榊原:はい。そのきっかけをどうつくるかを常に考えています。桐生君も東洋大学を知ってもらうきっかけになると考えています。ではその先は何か。

力を入れているのは、入試部で作成している講義の模様を収録したダイジェスト動画の配信です。1本20分くらい。ただ単にカメラを固定して撮影した動画をアップしても、絵面の変化が乏しいのでしっかり見てもらうことは難しい。そのために3~4機ほどカメラを入れ、様々な角度から押さえて編集も凝っています。「ハーバード白熱教室」のイメージですね。そのためにも事前に詳細な台本やストーリーを作成するなど、下準備がとても重要になります。

谷ノ内:私もいくつか観ましたが、すごいですね。通常授業の収録ではなく、そのために準備しているのですか。

榊原:そうです。紙の大学案内を作成していた時の費用を動画やウェブにつぎ込んだ格好です。先生の顔が見える、どんな先生か事前に知ってもらえるのは大切なことだと考えています。

ところで、うちのサイト、1年で最もアクセスが多いのは、1月2日、3日なんです ...

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