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近大マグロに続け! 全入時代の大学広報

「広報ファースト」の近大 どこまで進化し続けるのか

東大阪市など6カ所にキャンパスを構え、3万3000人超の学生を擁する近畿大学。4年連続志願者数日本一など、急速な躍進を支えるのは「広報ファースト」の姿勢だ。

10月17日、近畿大学東京センターで開かれた報道関係者懇談会。91人が来場し、予備の中継会場(左上)も満席に。冒頭で塩﨑均学長も挨拶。近大マグロのにぎり寿司など、近大の食材を使ったメニュー11品が振る舞われた。

10月17日、JR東京駅八重洲口前にある近畿大学東京センターで報道関係者懇談会が開催された。この会は今回で3回目を迎え、参加人数は91人。新聞・テレビ・雑誌・専門紙誌などの記者、教育業界関係者らが参加した。ジャンルも教育だけでなく食品、生活文化、化学、スポーツなど幅広い。14学部48学科からなる総合大学として、近大がカバーする教育・研究領域の広さを物語っている。

当日参加していた担当記者の多くが一様に口を揃えていたのが、近大の広報戦略の上手さだ。「ニュースを発信するタイミングが上手い」「情報量と分析力を持ち合わせていて、取材する側も鍛えられる」「他大学と比べて、コンテンツの見せ方が一味違う」「パラアスリートの育成など、先見の明がある」といった声が聞かれた。

一方で「何でもオープンにしているので、公開情報を上回る分析記事を書かねばならないプレッシャーがある」「ネタががっちり固められすぎていて隙がない」という記者泣かせの側面もあるようだが、「一般企業を凌ぐ広報戦略がある。他の大学も学んでほしい」というのが一致する見解だった。そこで今回は、近大の「広報ファースト」の実態に迫ってみたい。

年間の取材件数は1426件に

現在、近大の広報は総務部広報室が担っている。総務部長の世耕石弘氏、広報室長の加藤公代氏を含むメンバーは15人(男性4人・女性11人)。報道対応や渉外業務、大学案内や各種公式サイトなどの広報媒体、オープンキャンパスなどのイベント企画などを手がけている。

広報室の業務別分担表によると、33の業務をそれぞれ分担しているが、ニュースリリースの制作と取材対応、新聞の掲載チェックには全員があたっている。ちなみにリリースの発信本数は年間474本で新聞掲載率は49.2%、取材件数は1426件(2016年度実績)だった。図1、図2で推移を見ると、いずれも前年を大幅に上回る活動量であることが分かる。

報道関係者懇談会では「敗者復活戦」と題し、2017年度に日の目を見なかったというリリース6本が配布された。

近大の調べによると「同規模の関西エリアの大学と比べて6倍以上のリリースを出しているが、新聞掲載率は近大の方が高い。本数が多いからといって無駄打ちが多いわけではない」と世耕氏は説明する。

総務部長・世耕石弘氏のプレゼンは笑いが絶えない!

次なる「グローバル化」への課題

報道関係者懇談会は塩﨑均学長の挨拶に続き、世耕氏から近大の最近のトピックが共有された。建学の理念のほか、京大・阪大・神戸大・関関同立との「入れ替えなきリーグ戦」「近大に対する評価やランキング」など、数字やファクトをもとに畳みかける。

中でも注目したいのは、「近大流グローバル化への対応」という話題だ。おりしも10月5日、完全養殖した「近大マグロ」の海外輸出を始めると発表したばかりだ。

これまで近大のニュースといえば、IT/デジタル領域の話題が多かった。ネット出願の導入(2013年度入試から。2014年度入試から紙の願書を廃止)、アマゾンでの教科書販売(2014年)、キュレーションサイト「Kindai Picks」の開設(2015年)、クラウドファンディング「CAMPFIRE」による研究資金調達(2016年)、そして大学サイトのリニューアル(2017年)などが目立っていたが、「グローバル」分野の強化こそが次なる課題とみられる。

ここにも近大の広報戦略がある。Times Higher Educationの「世界大学ランキング」で、近大は早稲田や慶応などの私学と並び上位にランクインしている。研究や論文引用数、産学連携収入といった指標では関西エリアの他大学と比べて優位性を発揮している。一方で「国際」分野は立命館や関西学院、同志社よりも下回るスコアとなっているのだ。

その突破口として期待を込めているのが、2016年4月に開設した国際学部。ベルリッツコーポレーションとの連携協力により設置され、1年次の後期からは全員が海外に留学するというカリキュラムとなっている。これにより、「2015年度には345人だった留学する学生数が、2016年度に全学で881人に増加した」「海外協定校数は5年間で5倍、交換留学生数も増加」「2016年度9月に留学した国際学部の学生のTOEICスコア伸び率の高さ」といった実績を次々と挙げていった ...

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