2016年4月に開学した、角川ドワンゴ学園の通信制高校「N高等学校」。開学時に1500人だった生徒数は2年目の現在、4300人に達している。新たな教育の選択肢を提示するN高が取り組む、広報活動とは。
2016年4月に六本木のニコファーレで開かれた「VR入学式」は多くのメディアで取り上げていただいて、「N高さんは派手ですよね」とよく言われました。ただ、そのイメージは一部分であって、我々がしっかりと伝えていきたいのは本質的な教育の内容や理念です。そこでこの春にはN高のブランド広報を担う専任として、企業やPR会社での実務経験がある担当者を採用しています。
N高校は通信制高校の部類に入りますが、従来の高校にはない新たな付加価値を提案しようという思いで開校しました。究極のゴールは、通信制で学ぶことで生まれる自由な時間を使って、興味のある分野や得意な領域を伸ばしながら「世の中でしっかりと自分の立ち位置を見つける」こと。そのために外国語やプログラミング、イラストや声優といったクリエイティブ関連の授業も充実させています。
これまで通信制高校の社会的な存在意義というと、高卒認定の資格取得のため、あるいは不登校や中退後の受け皿という役割が大きかったと思います。挑戦的な言い方ですが、N高の場合は全日制を志望する子にも選んでもらえる学校にしていきたいですね。
例えばコミュニケーションツール「Slack」を使った毎日のホームルームや、担任教師との1to1の対話も独自の取り組みです。所属クラス以外にも生徒が自由にSlack上でグループを立ち上げることができて、部活や趣味などを共通項に友人関係を築いています。文化祭や音楽祭などのリアルなイベントも多いので、さらに交友を深める機会となっていますね。
最近では朝日新聞の教育面の連載「いま子どもたちは」で、6月から7月にかけて「ネット高校の挑戦」と題した12回のシリーズで取材を受けました。世界的にもオンライン教育は注目を集めていて、9月に台湾で開かれた国際展示会「Digital Taipei」では米ミネルバ大学と香港科技大とともに登壇する機会も得ています。今までにない新設校ですから、やはりマスメディアや公の場に出ていく効果は大きい。保護者の方々の理解を得るという意味でも、重要だと考えています。
今回は大学広報の特集ということで、このようなテーマが注目されること自体が教育業界の変革だと思います。一方で、私としては大学教育にふさわしい生徒を高校側が育てきれていないのでは、という問題意識もあります。そのしわ寄せが大学側にいっているとすれば、大学そのものの在り方や入試制度よりも生徒を送り込む側である高校に責任がある。だからこそ、我々が目指している「社会での自立につながる教育」の役割は大きいはずです。
N高で本格的な進路指導が始まるのは、今の2年生から。3年次からの転編入生もいるので一部始まっていますが、進学希望者は一定数いると予想しています。ただ進学校ではないので、進学率を競うつもりはありません。もちろん東大合格者が出たらすごいなとは思いますが(笑)、進学でも就職でも、自分の進路を見つけてくれるのが一番。通学コースではプレゼンの授業やプロジェクト学習などもあるので、多様な入試制度のなかでN高生の個性が生きる場面もあるかもしれないと期待しています。(談)