少子高齢化が進み、800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、大学広報の現場の課題や危機管理、アスリート広報のポイントを解説します。

2014年10月20日、佐賀県武雄市の武雄市立山内西小学校にて、武雄市のICT教育に関わる小学1年生のプログラミング授業に関する2回目の記者会見が行われた。登壇者は、右から、東洋大学の松原聡教授、DeNAの南場智子会長、DeNAの川崎修平CTO、武雄市の樋渡市長(当時)など。会見はメディアを生徒に見立てて、授業風に展開し、実際に小学生たちがタブレットを使った授業も公開された。
民間との共同研究数は4倍超
大学の持つ教育・研究リソースを使った社会貢献の形は多くあります。大学と企業のコラボレーション、産学連携などは皆さんがイメージしやすい取り組みではないでしょうか。民間企業と大学などとの共同研究件数は文部科学省「大学等における産学連携等実施状況について」によると、2003年と比較して、現在は1.93倍に膨れ上がっています。企業でも異色のコラボなど、それ自体がニュースになることも多く、そこから新たなシナジーが生じてインパクトの大きな広報や宣伝も多く生まれているのが現状です。
しかし、こうしたコラボが多数存在している状況では、「よくある話」で終わってしまうことも。その取り組みを広報としてメディア露出に結びつけるのであれば、何らかの目新しさや独自性を打ち出す必要があるでしょう。
DeNA、武雄市と連携した舞台裏
私自身、産学連携や自治体との協定に何か新しい軸が入らないものかと考えていたときに携わったのが佐賀県武雄市のICT教育に関わる小学1年生のプログラミング授業でした。このプロジェクトは、従来の「産学連携」や「地域協定」ではなく、三者間の「産学官連携」となっています。「産」は南場智子会長率いるディー・エヌ・エー(DeNA)。大人気のモバイルゲームなど様々なネットサービスを展開、近年は遺伝子検査や球団運営まで幅広い活動に目が離せない方も多いことでしょう。「官」は、佐賀県武雄市。ご存知の方も多いと思われますが、市営図書館の運営を民間委託して大きな話題となりました。
この話は、連携のカギとなる東洋大学経済学部の松原聡教授からの「南場さんや樋渡さん(前武雄市長)といろいろ話をしていて …