社会情勢の変化によって企業のリスクは大きく様変わりし、有事の際に企業のメッセージを早く正確に伝え、ブランドの毀損を最小限に留める「守りの広報」の重要性が問われることとなった。この10年に広報会議で取り上げた事例の中から、今私たちが学ぶべき教訓について考えたい。
時代とともに様変わりしてきた企業リスクと広報の役割。本誌にも連載を持ち、企業不祥事が発生する度にコメントを寄せてくれた、本誌の「ご意見番」とも言えるリスクコンサルタントの白井邦芳氏とともに、この10年を振り返りたい。
SNSが台頭、風評が経営危機に
過去を振り返ると、ソーシャルメディアの技術的革新によってリスクは拡大、風評化する時間も短くなってきている。特に大きな変化が見られたのは2000年と2005年だ。
1990年代、これまでテレビ報道中心だった不祥事の発覚は、2000年の「2ちゃんねる」の台頭によって企業の危機管理の在り方を変貌させた。主に深夜に書き込まれる特定不能の投稿者の発言に一喜一憂することも少なくなかった。1000件単位で書き込みされるスレッドという情報のバルクには恐ろしいほど詳細な情報やデータなどの内部情報が紛れ込むことも多々あり、ネット上の多くの投稿者による「民意の形成」という新たなリスクによって企業は危機にさらされた。
2005年にはブログが登場し、「炎上」という名のとおり …
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