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統合報告から見える新しい広報のかたち

広報を鍛える統合報告

後藤大介(アイディアシップ 代表取締役)

IR情報やCSR報告などの経営情報を整理し発信する「統合報告」という考え方が徐々に日本企業にも広がり始めている。その背景や企業への影響、今後についてレポートする。

第 2/4 回 広報を鍛える「統合報告」

統合報告書には何を書くのか

統合報告書の「内容要素」

1 組織の概要と外部環境

2 ガバナンス

3 ビジネスモデル

4 リスクと機会

5 戦略と資源配分

6 パフォーマンス

7 見通し

8 作成と開示の基礎

企業・組織の価値創造を語るのに欠かせない要素が列挙されている。

今回は、「統合報告は、コーポレート・コミュニケーションにとってどのような意味があるのか」という点を考えます。

そもそも、統合報告書(Integrated Report)には何を書くのでしょうか。

IIRC(国際統合報告評議会)は、統合報告書を「外部環境の文脈における組織の戦略、ガバナンス、パフォーマンス、将来の見通しが、いかに短・中・長期の価値創造につながるかに関する簡潔なコミュニケーション」と定義しています。そして、上の8つを「内容要素」として挙げています。

見出しでだいたい中身の見当がつきそうですが、3の「ビジネスモデル」は少し説明が必要です。一般的な理解(儲けを生む仕組み)と違い、IIRCが考えるビジネスモデルは、「多様な資源との関わりの中で展開する事業活動の見取り図」といった意味です。この資源(IIRCは「資本」と呼びます)は、いわゆるヒト、モノ、カネだけでなく、企業文化、暗黙知、ブランド・信用、ステークホルダーとの信頼関係、自然環境・生態系まで含みます。なかなか気付かない、あるいは把握しにくい資源を含め、上手に活用するとともに、先見の明をもって充実に努めている(ことを示せる)企業は、今後が有望だということになります。

統合報告書における「価値」は、「資源(資本)をいかに変化させたか」を指します。資源がストックで、価値はフローです。創出される価値には、自社に帰属するものもあれば、直接的には利他的でありながら、いずれ自らに還流するものもあります。

このように、IIRCが考える統合報告書は、企業の活動の概略とその方向性を、社会とのダイナミズムの中で描き出すコミュニケーションツールとして想定されています。

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